episode.299・Hiroomi.Tosaka ページ21
「……ﾊｧ…」
思わずこぼれてしまったため息も、もうどうでもいい。
隆二とのキーチェックも終わって、帰る準備してるときに出たため息。
当然隆二に突っ込まれたんだけど、もうそれもどうでもいい。
また零星との時間が消えた。
「もう寝てんだろうな……。」
「…何？零星さん？」
「うん。」
その会話の後にできた妙な沈黙。
何かと思ってカバンに荷物を入れてた手から隆二に視線を渡した。
そこに映ったのは、何かを探るような、怒ってるような顔の隆二。
「…………何……？」
「なんかさ、ずるいよね。うん、ずるいわ。」
は？って笑って主語頂戴って言ったら、俺の目をまっすぐ見てきた。
「俺、零星さん諦めるのに必死だったのに、臣ったら毎日惚気けるんだもん。」
俺を見てた隆二の目は揺るぐこともなく俺を見てる。
今すぐ離したい俺も、その目から自分を動かせなくなった。
ほんの一瞬の間だったけど、息をするのも忘れるくらいの衝撃。
でも、よく考えれば、隆二が零星を諦めたって話も好きじゃないって話も聞いたことなかった。
俺の背中を押すって、零星から離れてくれただけ。
「……やだ、黙んないでよ臣。そこはなんか突っ込んでよ。」
恥ずかしいじゃん。って笑った隆二が、本当に笑ってるわけじゃないことに気がついて
さらになんも言えなくなった俺。
───────ほんとにずるいやつだってことは認められる。
・
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作者名：Layla | 作成日時：2018年1月12日 11時
