可愛いお姫様

嫌よ嫌よも好きのうち ページ10

side KENJIRO




やってしもーた。


昨日、Aと大喧嘩。


しかも、勝手にお菓子くったとかやなくて振りについての大喧嘩。


立ち位置と振りを変えようって話になって、Aと俺はあーだこーだと喧嘩に。


いつもみたいに言い合って終わるやろ思っとったらどっちも本気になってもーて……もう。

それ以上は思い出したくもないわ。



「健ちゃん謝りなよー。せっかくの誕生日なのにさー」



そう、自分の誕生日やのにAと喧嘩して口聞けてないねん。


でもなぁ隆二。

俺にも俺のプライドがあんねん。デブ！って叫ばれたんやで？



そんな事考えてたってAが自分から謝れるような性分してないゆーことは分かっとるし。


昨日もあれからは不貞腐れたまんま俯いとったし。


結局、俺から謝るしかないんやけどなー。



そんなこと思ってた矢先“健さん。”って小さな声。

か細くて揺れてる声。


いつの間に楽屋戻ってきたんかもわからんかったAが隣で目を潤せてる。



ﾌﾜﾌﾜした髪は、昨日までアーモンドみたいな可愛い色やったのに

次の新曲の撮影やら普通の撮影やらで色を落として黒い髪。


辛そうな顔には見えるけど、嫌そうな昨日のふてくされた顔は消えとる。



「なんや。」



謝ろうと決めたんに冷たく返してしまうんは、やっぱり俺も昨日のことを根に持っとるから。


俺の隣でさらに縮こまったように見えるAは“ごめんなさい”って涙ながらに呟いた。


その時の本当の俺の心情っていうたらもうびっくり。


あのAやで！


先輩でもなんでも思ったこと言えて、あのプライドの高いAやで！？


しかも泣いとるからどうすればいいねん。



「いや、あれは俺も悪かったし。泣かんとって。お互い様やからもっかい考え直そうや。」


「うんっ。」



泣き止んでくれんねんけど。


この経緯を見守ってたメンバーも自分から謝ったAの成長に涙ぐんどるわ。

……いや、ちょつと盛った。涙なんてないけど微笑んどる。



「けんじろーくん泣かしたー」



ガキみたいにからかってくる臣ちゃんに、やかましいと突っ込む。


それにｸｽｸｽ笑っとるA。



「健さん、お誕生日おめでとー。」



そう言って渡してくれたんは綺麗に包装された袋。

開けて出てくるのはピッチピチの女が履くような水着。



「いやなんでやねん！履けるか！」


「ごめん。こっちです。それも上げるけど。」



そうやって渡してくれたんは綺麗なブレス。

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