【歌い手】SouだけにSou快。

爽快に８ ページ12

「いってきまーす」
「いってらっしゃーい！」


いつからだっけ。
この挨拶が日常になったのは。

親が仕事で家に居ない私は、挨拶をすることがあまりなかった。


天月がこっちに越してきてからか。

学校への道を少し早足で歩く。


東京の人はみんな下を向いて早足で歩く。
私もその中の1人。

でもまぁ。

例外もいるわけで。


私の前をゆっくり歩く彼。
その視線は確かに真っ直ぐ前を見ている。

うん、やっぱり凄い。

都会の雰囲気に呑まれない彼独特のオーラ。

ふわふわ緩い感じ。


周りの人からは「王子」なんてあだ名が付けられてたっけ。


「王子、おはよ。」




「A！！その呼び方やめてってばぁ！」
「あはは、ごめんって！w」

むっ、と顔を膨らませる王子こと空井爽。

そんな彼と私の関係は”友達”


常にマスクを着けてる私と爽。

きっとまだお互いの顔をしっかりと見たことがない。


「爽はマスク外さないの。」
「Aこそ。」


私の質問に即答で返されるのは、この会話がもう毎朝の恒例だから。


「爽のお顔見たい〜。」
「だめ〜。」


なんて戯れながら学校に行って。

クラスは違うからここでお別れ。


「じゃあの、爽よ。」
「Aよ、頑張りたまえ。」


下駄箱の前でハイタッチする私達は、はたから見たら結構変な人だと思う。

爽快に９→←爽快に７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す