焦がれた背中、焼きついた瞳 (ページ5)

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私が呪術高専3年の時に悟様は入学された。
『ご入学おめでとうございます。』
露骨に嫌な顔をされ、背中を向けられた。いつものことだ。
「そういうのやめろって言ってるだろ。」
『そういうわけにもいきません。僕はあくまで‥』
「あーはいはい、もういいから。黙ってろ。っていうかどっかいって。」
『かしこまりました。』
用事がないのは事実だ。形式上挨拶をしておかなければ、上にどのようなことを言われるか分かったものではない。

そして毎日
『おはようございます。悟様。本日は○○県×町にて任務となっております。』
「・・・わかってる。うるさい。ついてくるな。」
『お気をつけていってらっしゃいませ。』
っと、このような会話にもならないような会話を繰り返している。
分かっている。私だって、学校でこんな話し方されたら嫌だ。
でも仕方がないのだ。少しでも怪しい行動をとれば、すぐに私の身は危なくなる。別に私個人が死んですべてが終わるならそれでかまわないが、家にいる多くの術師たちは行き場を失う。それだけは何とかして阻止しなくてはならない。みんないい人たちだ。血のつながりも何もないが、ただ朗らかにわたって心が休まる環境を提供してくれる。彼らが本当はどう思っているのかはわからないが少なくとも私にとって生きる理由は彼らにあるのだから我慢が必要だ。

気がつけば我慢も習慣化して、月日も流れ私は卒業し五条家に仕えながら呪術師として働きだした。
半年も絶たないうちに、悟様は”最強”の名をほしいままにするほどの実力をつけ、親友だとおっしゃっていた夏油さんの裏切りにあった。
私はその時初めて悟様の目に怒り以外の感情を見た気がする。でもそれはあまりに痛々しく、悲しい色をしていた。

悟様が教師になってからという物、私も東京に住み毎日の送迎その他周辺雑務をこなしながら生活をしている。
相変わらず
「今日も来たのかよ。帰れ。」
『悟様をお送りしてから帰らせてもらいます。』
というような険悪？な雰囲気だが気にしないようにしている。
『いつでもお迎えに上がりますのでまたおよびください。』
「絶対呼ばない。」
そういって毎回律義にメールをくれるこの男はいつどこで素直さを捨て去ったのだろうかと、いつも疑問に思うのだ。