焦がれた背中、焼きついた瞳 (ページ40)

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春が来た。今年は気温が高かったことが影響し入学式シーズンにはすでに桜は散ってしまったが、悟さんと花見をできたので新入生には悪いが私は満足を覚えている。
「A緊張してる？」
『そんなことありませんよ。』
今日から私は東京都立呪術専門高等学校の教員である。
『色々教えてくださいね、悟先輩。』
「・・・。もう一回言って！！」
『虎杖君たちも卒業しちゃって寂しいですけど、これからまた騒がしくなるといいですね。』
「ねぇ、無視しないでよ！！」
柔らかい日差しが差し込む廊下をわざと日向を歩きながら日々の何気ない幸福を感じる。
「五条さん！！任務に行ってください！！！」
補助監督さんの叫びが平和を割いていく。いや、これも一種の平和なのだろうか。
「僕今可愛い彼女と過ごしてるんだけど。」
明らかに不機嫌になった悟さん。
『悟さん、仕事はしっかりやってください。』
「えー。じゃあAが僕のこと悟先輩ってもう一回言ってくれたら行く！！」
『本当ですか？』
「ほんと！！」
さっきはここ最近やっと覚えたからかいという物を実践してみたが他人がいる前であの手のからかいは少し恥ずかしい。
『少し、かがんでもらえますか？』
「？うん。」
彼の肩に手を乗せて耳元でそっと
『お仕事頑張ってきてください。悟先輩。』
とつぶやいた。精一杯の努力です！！
悟さんは少しフリーズした後にはぁーーーーーーーーという大きな溜息をついて
「可愛すぎ。僕が帰ってきたら覚悟してて。」
と私の耳元でつぶやいて行ってしまった。何をどのように覚悟しておくのが正解なのか、そもそもそのことを考える余裕もないくらいに彼の一挙手一投足にワタワタしている。
「あ、そうだ！！A！！」
『・・・はっはい！！』
「愛してるよ。」
ずるいなぁ。
『行ってらっしゃい！！』
「うん！」

愛してる。
愛ほど歪んだ呪いはない。
人間の負の感情から生まれる呪いの最大級が愛だとするのなら、愛し合うことはどうなるのだろうか。答えはきっと誰にもわからないし、一人一人違うだろう。私は私の答えを知るためにこれからあなたを呪っていきます。

『悟さん！！大好きですよ！！』
焦がれた背中にそう叫んだ。
慌てて振り返った彼の眼は隠されていたがそこにはあの時見たきれいで少し驚いて見開かれた目がある気がする。記憶に焼き付くあなたの目そのモノがそこにある。

焦がれた背中に手を伸ばし焼き付く瞳をもう一度。
それが歪んだ呪いのスタート地点。

終