焦がれた背中、焼きついた瞳 (ページ38)

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「何はともあれ、悟に何かされて困ったらいつでもいいに来なさい。」
学長の困ったような優しい言葉が身に染みる。
『はい。』
虎杖君たちと戯れる悟さんを見ながら少し冷めた珈琲を飲んで窓から差し込む光に包まれる。そんな午後のひと時を過ごしながら、幸せをかみしめる。これまでの人生、不運であったとは思うが不幸であったとは思わない。人に恵まれて幸せだった。辛いことは多かった。自分で人生の何かを決断したことがないことがどこかで辛いと感じていた。幸せの中にまどろみながら勇気を出して自分で幸せを、幸運を呼んでみよう。
『学長。』
「なんだ？」
『報告が一つと、希望が一つあります。』
「聞こうか。」
『私、悟さんと付き合うことになりました。』
「そうか。別にそのことは教師に報告する必要はないぞ。」
『言いたかっただけです。それと希望なんですが、私教師になりたいです。』
「それはただ単に悟と一緒にいる時間を作りたいということか？」
『いいえ。悟さんの夢を手伝えたらいいとは思いますが、夢だったんです。学校の先生になること。』
「そうか。お前なら安心だ。手続きをしておこう。」
『ありがとうございます。』
寒かった冬が明ける。春を告げる鳥たちがさえずり始める。
「A！！こっちおいで！これ想像以上においしかった！！」
そう。あなたがきっと私に春を教えてくれる。