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釘崎side
翔さ‥Aさんは憧れだった。
まだAさんが五条に仕えてた時
”釘崎さん今日はどこかお出かけですか?”
制服を着て廊下を歩いていてそういわれた。
”え、なんでわかったんですか?!”
”メイクがよそ行きの時の感じなので少し気になったんです。”
ここにいる人たちは誰も気が付いてくれなかった。少なくとも言ってくれる人がいなかった。
”ただでさえ釘崎さんは綺麗ですから変な人に声をかけられないように気を付けてくださいね。”
そういって去っていくAさんを見て憧れた。他人の変化を良く見ていて素直に褒められる姿がかっこよかった。どうやたらそうなれるのかを知りたくてよく見るようになった。
見るようになって分かった。あぁ、Aさんは五条のことが好きなんだ。男が男を好きでも当人たちが幸せならそれでいいだろうと思うから何でもよかったけどどうも時折見せる顔が女なのが気になっていた。
そんなある日たまたま見てしまった。
”主従関係は解消する。”
”畏まりました。”
なんで?なんで食い下がらないの?
”あなたが主人でよかった”
”それは、直接言ったらいいじゃないの!!”
”釘崎さん。”
近くでみた顔は悲痛なんて言葉では言い表せない何かを抱えていて
”なんで、なんで翔さんみたいにかっこよくて優しくていい人が傷つかないといけないのよ。”
”僕はいい人なんかじゃないですよ。そうやって他人のために泣ける釘崎さんの方がよっぽどいい人ですよ。”
自分がつらい時ぐらい文句の一つでもこぼしてほしい。
”僕はこれから予定があるので失礼します。あまり泣かないでください、目が腫れてしまいます。”
困ったようにハンカチで私の涙を拭きながらそういうとそのハンカチを握らせて去って行ってしまった。
”馬鹿翔さん。”
それから二年見かけなかったし、五条に対する私のあたりはきつくなった。
”ねぇ、僕野薔薇に何かした?”
”自分のこころに聞けクソが。”
帰ってきたとき翔さんがAさんだって知って、話すたびにそれでも私の憧れた姿はこの人の芯の部分だって知れて、幸せになって欲しいと思った。
私が私であるためにここにいるけれど、周りの人もそうあろうとするこの環境は好きだ。だからAさんもこれからはもっと素敵に、自分を愛してほしい。それが私の願い。
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作者名:林檎 | 作成日時:2020年12月4日 2時