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「おいA、いつまでそうやっている気だ。」
悟君、いや五条様に挨拶し二人っきりになった瞬間に言われた。
『嘘とは何のことでしょうか。』
無表情でそう告げた。
「ッチ」
舌打ちと共に顔を背けられたため彼がどう言う表情をしていたのかは読み取れなかった。
「もういい。下がれ。」
『畏まりました』
背中を向けられ告げられた言葉は冷たかった。
挨拶の後私をここに連れて来た使用人武蔵野と合流して今日は帰ることになった。
帰りの車でいくつか上層部の決定を告げられた。
一つ、上層部と武蔵野以外に私が女だとバレた時点で処刑する
一つ、上記を守った上で鞍馬家の復興を認める
一つ、呪術師として働くこと
殺される事を恐怖だとは思わなかった。ひどい事を言われているようだけど、親切に私の世話をしてくれる武蔵野は好きだしお家復興が果たせるのならば大切な守るべき存在が増えるという事で私が死んでしまったらその人たちも行き場を失うのではないかと思うと鳥肌が立った。
『武蔵野さんは味方で居てくれますか。』
ふと敵が居るのかもわからない状況で彼女に聞いた。
「…はい」
覚悟を含んだその言葉に安心感を覚えた。
五条side
『Aは死にました。』
という彼女が信じられなかった。
たった一度しか会っていないただの女のはずなのにあの日から頭から離れない。
瞳から光が消えて虚な、術師ではなかったら呪いを生み出しそうなオーラを放っていた。出会った瞬間はそうだったのに術式を見つけてやったら嬉しそうに目を輝かせて泣き出した事が脳裏に焼き付いているせいか今にも泣き出しそうな虚無を目に写している彼女にイラつきを隠せなかった。
「もういい。下がれ。」
イライラする。嘘をつく彼女にも、彼女が死んだと言い張る彼女にも、自分では持て余してしまう感情にも。
この感情を抱くには俺はまだ幼すぎた。
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作者名:林檎 | 作成日時:2020年12月4日 2時