焦がれた背中、焼きついた瞳 (ページ30)

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五条side
数百年ぶりの無下限術式と六眼の抱き合わせ。両親含め僕を僕として見てくれる人なんていなかった。僕の才能と家の金、其れしか見ていない周囲が大嫌いで、たまたま連れてこられた鞍馬家でふらついていたら出会った女の子。虚ろな何も映っていなかったその眼に僕が入って、僕を僕として見てくれたその瞳が焼き付いて、僕は君に恋をした。初めてをくれたから特別なんだと思っていた時期もあったけどそれはきっかけでしかないことに気が付いたんだ。
「君が、Aのことがずっと好きなんだ。君がいないとダメなんだ。Aがいるから僕が僕で居られて、世界が輝いて見えるんだ。」
滑稽だってわらってよ。
「世界が滅んだって、Aが笑っていられるならそれでいいって思っちゃうんだ。」
君のことになると僕は最高にかっこ悪いから。
「Aの前ではかっこつけたいのに幼稚なマネしかできなくて、何をしても傷つけて、僕の知らないところで泣かされていることを知っても何も動けなくて、最強だって自他ともに思ってたけど君のことになると僕は最弱になる。」
理屈も理由も根拠もない。
「そのくせ、かっこ悪いところをあんまり見せたくなから今まで逃げてきたんだ。」
ただ今はこの世界が心地いいと思えるのには
「僕はもう逃げない。だから、僕の隣にいてよ。僕は君から離れないから、Aも僕から離れないで。」
君がいないと話にならないんだ。

Aside
「Aのことがずっと好きなんだ。」
目を見開いた。
ずっと私の顔を包んでいた手が少し動いて親指が目元をなでる。
「世界が滅んだって、Aが笑っていられるならそれでいいって思っちゃうんだ。」
あぁ、私もあなたが笑っていられるならそれでいいとよく思う。
「君のことになるとぼくは最弱になる。」
私の前では特に素直じゃないと思うことが多かったのもうなずける。でも、私の前だけだと思うとなんだか可愛くて仕方がない。それにいつも最後には助けてくれた。
「今まで逃げてきたんだ。」
逃げる選択も出来ずにただ感情を殺して流されてきたんですよ私は。逃げるだけの強さがあなたにはある。
「僕はもう君から離れないから、Aも僕から離れないで。」
そういって強く抱きしめてくれた。
その熱を、その鼓動を、その呼吸を感じて、物足りないと感じていた理由がやっとわかった。
『愛してます。悟様。』
溢れる感情は悲しみや驚きから、愛おしさに変っていた。