焦がれた背中、焼きついた瞳 (ページ22)

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家入side
『お会いするべきなのだと思います。』
この人は本心を言わない。
「五条、引きずってここに来させましょうか？」
『・・・それはあの人の気持ちを無視することになるので・・』
自分より他人。
「虎杖たち使って連れてここさせます。」
『いいえ、私の私情で五条様に迷惑をこれ以上かけるわけには行きませんし、きっと今回助けてくださったのも上層部をつぶしにかかるいい機会だったからでしょう。どんな形でもあの人の役に立てたなら本望です。もし、近いうちにあの人に会うことがあったらお礼を言っておいてもらえませんか？』
それでもこの人は昔から感情を隠すのが少しだけへたくそだと思う。今もほら、そうやって目が寂しそうに”会いたい”って叫んでる。
「・・・鞍馬先輩、A先輩って呼んでいいですか？」
『・・・なんで名前知っているんですか？」
「貴方がまだ五条に仕えていた時倒れてここに来たことあったでしょ、あの時あいつが言ってたんです。きっとあいつはあなたが思うよりずっと前から縛りについて勘づいていましたよ。」
『両親や今鞍馬家にいる方々の先代がなくなった火事より前に一度お会いしたことがあるんです。それが間違いだったのかもしれませんね、はじめから私が私であることはあの人にばれてた。それでも周囲に言わずにいてくれたんです。五条様、私のこと一度も翔って呼んだことないんです。優しい人なんです。ちょっと性格に難があるように見えますけど、やさしくされたことが高専に入るまで経験したことがなかったからどうしたらいいのかわからないだけで本当にやさしい人なんです。』
愛おしそうに目を細め、幸せそうに思い出に浸っている。
「いや、あいつはただのクズですよ。なんでも持ってるくせに性格とアルコールに対する免疫だけどこかに捨ててきたろくでなしです。」
『そこがまた、可愛いでしょ。』
ふふ、と口元に手をあててきれいに笑う。あぁ、分かった。この二人は互いを思っているのに環境がそれを許さなかった、互いが互いの幸せを考えお互いを優先させてきた、そのせいで二人は自分に呪いをかけた。

　相手と一緒にいる幸福を捨てる代わりに、相手の幸せを確立させる。

『家入さん、Aって呼んでもらえますか？私この名前結構好きなんです。』
「もちろん。A先輩も私のこと硝子って呼んでくださいよ。」
あぁ、本当に五条お前はめんどくさい。