君と僕で愛。【Fischer's】 (ページ9)

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第8話・・・ページ9

「悪い女」
そう呟いたのは1人、明るい歩道を歩くモトキだった。マサイが部屋を飛び出してから数分後、用事があったためシルクの家を出たのだ。雲一つない晴れ晴れしい今日は、どす黒く染まった誰かを責める。モトキはため息をついて空を見上げた。眩しくてすぐに顔を伏せた。
「モトキ」
その時。後ろから息の切れたような声がして振り返る。そこにはシルクがいてその後方をンダホが追いかけるように走っていた。
「あぁ。どうしたの」
いつもと変わらない陽気な明るい声で返答する。シルクの表情もいつもと変わらなかった。ンダホが到着するのはあと、約30秒。
「お前、Aのことどう思ってんの」
日常会話のように淡々と進む会話。
残り25秒。
「好きだよ」
恥ずかしそうに俯くモトキ。
残り10秒。
「俺は好きじゃねぇ」
モトキは驚いたように顔を上げた。
残り5秒。
「なんで･･･」

「はあ、はあ、ちょっとシルク！コンビニそっちじゃないよ！なんで急に走るの！」
「じゃあな」
シルクは後ろに向き直すとンダホとともにコンビニへ向かって行ってしまった。モトキは数秒立ち尽くしてからまた歩き始めた。

彼の中で、なにかが動き始める。