君と僕で愛。【Fischer's】 (ページ7)

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第6話・・・ページ7

それからAはシルクと特別な時間や場所で会うことはなくなった。会うのはマサイの家で撮影をする時のみで、シルク自身も至って普通に接していた。そんな様子を見て、マサイは少し不思議に思ったが深く考えることをやめた。
「マサイ、今日は俺ん家で撮るから！」
変わらずに接するシルクにも多少の疑問も抱いたが、いつも通りの笑顔がやけに嬉しくて返事をした。
「おう」
家にはAという愛しい彼女がいて、同じマンションには最高の親友たちがいる。再度、自分の幸せを噛み締めた。
「マサイ･･･もう行くの？」
部屋着姿のAがマサイの裾を掴んで後ろから抱きついた。昨夜、あんなことを言ったとは思えないほど甘いセリフと声。

────私のこと、殺してくれても構わない

なんて。それくらいの決心なのだろうと解釈したマサイは許してもう一度愛し直すことにした。
「ごめん、撮影だから。夕方には戻ってくるよ」
Aは小さく、そう、と呟くと正面にまわって背伸びをし、軽く唇に触れた。突然のことだったのでマサイは目を開けっぱなしだった。
「いってらっしゃい」
トン、と背中を押した。開かれた玄関の扉から飛び出すマサイ。振り返ると閉まっていく扉の奥には笑顔で手を振るA。最大級の幸せを今、感じた。
「いってきます」
扉が閉まった音が廊下に響く。それがなんだかいい音だな、と思えてきて少し良い気分になる。足取り軽くシルクの部屋に向かった。
「あれ？マサイ、なんか機嫌いいね」
既に部屋に上がっていたンダホが寝転びながらマサイの顔を見て笑った。
「そう？気のせいじゃない」
なんて、嘘をつく理由は無いけれど1人でこの幸せを感じたくてニヤッと笑う。ンダホは察したが、知らないふりをするかのように伸びをした。
「シルクー、なんかマサイが気持ち悪いくらい機嫌いいんだけどー」
あ、と声が漏れそうになるのを抑える。シルクは編集しながら適当に相槌をうった。
「知らねぇよ！」
声は明るくて、なんだかこっちまで笑えてくる、ような。マサイはドキドキする度に安心するというようなことを繰り返してばかりいた。

それからモトキが来て、今日の撮影が始まった。いつも通りの雰囲気で心から楽しむ。撮影が終わると、部屋が少し汚くなってしまったのでみんなで掃除し始めた。