【ハイキュー】息をしながら死んでいる。

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「上条Aさんですよね？」
「そうですけど、なにか……」
「実は君にお願いがあって来ました」

確実にバレー絡み案件だろうな。
もうこの気持ち悪さをどうにかしたくて仕方ない。

早く話してほしい。
どうせすぐに断るんだから。

ここ最近は本当に人生で一番というか初めてバレーから遠ざかっていて、今になってそのことを考えるのが余計に辛い。

やっと今の環境に慣れてきたところだったのに。


「お願いって何ですか」
「君にうちの学生コーチをお願いしたいんです」
「私が男バレの、学生コーチ、ですか」


学生コーチというのは大学スポーツなんかではよく聞く役割だ。
高校でもその役割をチームに置くことは珍しい。

少なくとも今まで私は高校で学生コーチを導入しているところは聞いたことがない。


「教師として僕が君にこんなお願いをしていいものかと随分悩みました」
「それは、私の中学の頃の話を聞いたからですか？」
「……僕は君のようになにかスポーツで結果を残したりしたことはありません。でも、君ほどの選手がバレーから離れる決断をしなければいけないくらいのことがあったことは想像できます」


私は1年前の全中予選の準決勝で右足首を怪我した。
怪我の原因は味方との連携ミス。

味方の足の上に着地してしまって、勢いよく足首を捻った。

捻った瞬間は痛みがものすごくて一人で立ち上がることはできなかった。
控えの選手やコーチたちに担がれて、その試合はもちろん退場した。

そして私はその試合以来、チームに復帰することはなかった。

夏休み明けには新山女子中等部から近所の公立中学校に編入。
未だに当時の部員たちとは連絡を取らないし、顔も見ていない。


「生徒である君にこんなお願いをしていることは、教師として正しいのかと今でも迷います。でも、僕はどうしてもあの子たちと一緒に春高に行きたいんです｣



結局昼休み中に答えを出せなくて、後日また回答することにしてもらった。

あれだけ断る気でいたはずなのに、また私はバレーのことを考えながら過ごすことになったのだ。

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