【ハイキュー】息をしながら死んでいる。

10 ページ10

「芽衣だったらどうする？この状況」
「え？うーん、まともに飛んでも勝てないなら速さで突破かな」
「クイックってこと？」

確かにそれはあり得るな。
多少崩れたとしても、速攻を使うという選択肢があることを相手に見せた方がいい。

それに練習で何度も合わせていれば、きっと決まる。


「速いバックアタックもありだな。できる人がいればだけど」
「確かに。速めのパイプ攻撃は本当に連携命だからなかなか難しいけど」
「うわあ、私がセッターであそこにいたら絶対お兄ちゃんにそれ出すわ」

もし自分だったら後衛からのバックアタックはできるだろうか。
お兄ちゃんならやってのけるんだろうけど、正直自信ないな。

いや、芽衣のトスならできるか？

あのときのチームだったらどんな選択肢考えたんだろう。


「うふふふふふ」
「え、なに。急に笑い出して」

横に座っていたお母さんが突然笑い出した。
テレビを見てもなにか面白いプレーがあったわけでもなさそうなのに、一体どうした。


「なんだか昔みたいだなぁと思って」
「え？」
「ほら昔はよくみんなでそういう話してたじゃない」

お母さんは私たちを見てずっとにこにこしている。

なるほど、お母さんは昔のことを思い出して懐かしんでいたのか。

少し前までのうちの家族団らんといえば、バレーを全員で見ることだったからきっと懐かしくなったんだろう。



「Aがまたバレーを好きになってくれたかと思うとお母さん嬉しい」
「……別にそういうわけじゃない」


本当にそういうわけじゃない。

だってバレーを嫌いになんてなっていたら、今こうやって学生コーチの話で悩んだりしていない。


嫌いになれないから私はずっと息をしながら死んでいるんだ。

11→←9

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す