【ハイキュー】息をしながら死んでいる。

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「ちょっと聞いてもいいかな」
「うん、なに？」
「谷地さんとか、他の部員の人たちって私のこと誰から聞いたの？」
「私は学生コーチ？っていうのをやる人だって聞いたんだけど、実は私も先週くらいからバレー部に入ったばかりで」


更衣室への道すがら、気になっていたことを聞いてみたが私が望んだ答えは得られなかった。

どうやら谷地さんも最近バレー部に勧誘されて、私が見学した練習試合頃から本格的にマネージャーの仕事を始めたらしい。
今までスポーツの経験もマネージャーの経験もなかったが、3年生のマネージャーの方の熱心な勧誘と部員たちのことを見て入部を決めたことを話してくれた。


「学生コーチってなんだか凄いかっこいいね！」
「うーん、でも私も正直何をすればいいのか分からなくて困ってるんだ」

あれから自分なりに色々調べたり、考えたりしたけど明確な答えは出せないまま。
誠実な対応をと思ってはいるものの、それに頭の回転が追い付かない。

本当にこのままでいいんだろうか。


「参考になるかは分かんないんだけどね。初めてマネージャーの話を聞いたとき、私みたいなこれまで何も頑張ってこなかった人間があんなに頑張ってる人たちのマネージャーやってもいいのかなって思ってたの」
「谷地さん？」
「でもね、三年のマネージャーの先輩が言ってくれたの。揺るぎない意志も崇高な動機も要らない。ちょっとの好奇心さえあればいいよって。だから自分のためにも頑張ってマネージャーやってみようかなって思えたんだよね」


そうだ。
そもそも私は今回の話を自分のために引き受けたんじゃないか。

もちろんバレー部の人たちのことを全く考えていないわけではないが、まずは正解が何かを考え込むよりも先にやることがある。

谷地さんが言うように私だってまずは自分のためになにかやってみなくては。


「ありがとう、谷地さん。私も頑張ってみる」


私がこれからもバレーに背を向けるのか、それともきちんと息をできるようになるのか。

ここで逃げていては、目の前の好機を逃してなにもしなかった自分を憎み続ける人生になるのだから。

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