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「颯天ってすげぇんだな!!!!」
最初に口を開いたのは宿名だった。場違いな弾んだ声と表情で颯天を褒め称えていく。
「あ、ありがとう、ございます」
「でも、それ・・・・」
亀竜の目線の先には鞘に納められてはいるものの、颯天の手にしっかりと握られている刀、苦無、拳銃。この廃刀令のご時世に子供が武器なんて異様なことだ。
「はい、沖田隊長。
お返しします。すみませんね、悪戯しちゃってw」
颯天ははにかむと持っていた武器を沖田にそっと手渡した。
「俺、結構バトル系の少年漫画とか好きで、目の前に武器とかあるとついつい手に取ってみたくなるんですよねー。
そのせいで、ここの皆さんには迷惑をかけっぱなしですけど・・・」
「へー、これ俺のやつなのかぃ。
良いもん持ってるじゃねぇか、俺。」
手渡された武器を360度から眺め回している沖田に颯天は顔を向けた。宿名達に背を向ける形で。
「ベタベタさわらないでいただけます?」
その声はとても小さな呟きで、沖田にしか届かない。ついでに言うと毛虫でも見るような歪んだ顔も、沖田にしか見えなかった。
「この猫かぶりが」
沖田が小バカにするように颯天を見たが、そんな視線をするりと交わして、颯天は早々に宿名たちとの会話に花を咲かせていた。
「今日はわざわざこんなところまで来てもらっちゃって、ありがとうね。暑かったでしょ?」
タメ口交じりにそう言えば、三人の緊張は完全に解けてしまっていた。
そのまま縁側に飛び付いて、少し雑に草履を脱ぎ捨て、空いている座布団に滑り込む。家に行って知ることのできた彼女の意外に無邪気な一面に、ここに来てやっと胸を撫で下ろす。
彼らはクラスの中心人物だから、颯天はもう誰からも「哀れな同級生」という風には見られないだろう。
きっと3日4日もすれば、教室の一つの空席などただの日常の風景になり果てる。誰もただの不登校などにずっと構ってなど居られないのだから。
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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年6月14日 6時