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「はあ・・・もう疲れちゃった。」

裏門の前まで来て、ようやく姫様はスピードを落とした。もう額には汗が滲み始めている。
それもそのはず、姫様は重そうな着物を何枚も羽織り走っていた。このままでは町に出ても目立つだろう。

「姫様、一度戻って御召し物を変えませんか。」

「そうだった!忘れてましたw」

うふふ、と上品に笑うようすに少し安心する。だが、それもつかの間の安心。
そよ姫は躊躇いなく自らの着物に手をかけると、悪役の登場のようにそれをバッと剥ぎ取った。ふわりと宙にたなびく鮮やかな布たち。地につけてはいけない、とすべてを腕に受け止めていく颯天の横には、庶民的な着物を着た姫がいた。

「あ、颯天ちゃん。ありがとう。
着物は全部、あそこにおいといてもらえますか?」

「はい。」

そよ姫の指定した場所は廊下。本当にここに置いても良いものかと躊躇いながらも、颯天はそれにしたがった。
そよ姫は着物のなかに着物を着ていたようだ。聞いていた以上のじゃじゃ馬ぶりに少し圧倒される。

「それじゃあ、行きましょう!」

そのまま宙を舞ってしまいそうなふわふわとした足取りで、そよ姫は駆けていってしまった。

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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年6月14日 6時

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