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「銀時!!」

人もまばらになってきた。視界に入るのは先程の騒ぎで親とはぐれたと思われる幼子。ちょうど銀時が助け起こしているところだ。

「颯天か、こいつを頼む」

「ああ、分かった。
それより一度、止血だけでもしておいた方が良い。」

颯天の視線の先には、銀時の手。掌には派手に赤い亀裂が入り、湧き出るように血が流れ出していた。

「おいおい、こんなの気にしてたらキリがねぇぜ?うちなんか定晴っつーでっけぇ犬が毎日噛みついてくるんだからよ」

「血で刀が滑って、誰かの頭に刺さったら嫌だろ?ww」

先を急ぎたそうに前を見る銀時に、颯天は手際よく手拭いを巻いていった。

「じゃあ心置きなくいってこい。俺は晋介と話があるから」

「てめぇも物好きだな」

銀時も特に口は出さない。銀時にとって、高杉にとって、彼らは互いに信念をぶつけ合い対立した関係だ。しかし颯天だけは、昔からどちらにもつかず、どちらの味方でもある。今回ばかりは、高杉を怒らせてしまいそうではあるが。
二人はそれ以上言葉を交わすこともせず、視線を交わすこともせず、各々の目的の方向へ走っていった。



「もう大丈夫。あそこにいるおじさんに話しかければ、すぐに対応してくれるから。お母さんにもすぐ会えるよ」

逃げ惑う人の波にのれば、「御用」の提灯をもった役人の前に辿り着いた。彼に子供を預ければ、すぐに親も見つかるだろう。
抱き抱えていた子供をそっと下ろし、背中をとんと押してやれば、その子はすぐに役人のもとへ走っていった。
子供は感謝を述べるため、安心感に顔をほころばせながら振り返るが、そこにはもう誰もいない。

「あれ・・・?おにーちゃんがいない・・・」

颯天はその頃既に、鬼兵隊の巨大な艦隊に足を踏み入れている頃だった。
港は妙に静かで、空には月が控えめに、その存在を主張していた。

「待て!!貴様!!
ここがどこだか分かっているのか」

颯天は気配を殺すことも、忍び足になることもしていなかった。見つかることは必然だった。
声の主、ピンクの着物を来ている女は来島またこ。鬼兵隊の幹部で"紅い弾丸"という異名で恐れられている。
両手にしっかりと拳銃が握られ、眼光を鋭く光らせてている。颯天が一歩でも動こうものなら、容赦なく引き金を引くだろう。
しかしそんな様子も、颯天には愛らしい子猫が、威嚇をしているようにしか感じなかった。

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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年6月14日 6時

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