明るい男の子が実は無表情な女の子だった件について。 (ページ39)

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10分休みは毎回颯天を取り囲むように人が集まってくる。授業中も今までの授業の内容を教師と一緒になって熱弁してくる。颯天に静かな時間はなかった。そろそろ表情筋が疲れ始めてきた。ただ微笑んでいるだけなら自然にできるのだが声を出して笑ったり、驚いたり。大袈裟すぎないよう、だが無表情にならないよう。気を配りすぎて顔に力が入り頬の筋肉がぴくぴくと痙攣し始めた。
ありのままでいろといわれても、コレが颯天のありのままであり、なぜか人前で無表情ではいられないので解決策は一人になるしかない。
この学校では、昼食は自分で用意する。弁当でも、購買や食堂でなにか買ってもいい。颯天はどうせ学校に来る機会など数回しかないのだからと、屯所の食堂で出た朝御飯の残りを適当に竹製の弁当箱の中に放り込んできた。
昼食は一人で食べたい、と４校時終了の間際、机の中に入っている弁当箱に早くも手を伸ばし、挨拶と同時に席を立とうと思ったのだが。失敗した。流石に大衆の面前で颯天の本気の走りを見せるわけにはいかないため、加減をしていたら、チャイムと同時に生徒、特に女子が集まってきた。

「颯天ちゃんお弁当なの？」
「一緒に食べない？」
「一緒に購買いかない？」
「中庭で一緒に食べよ！」

優しそうだ。たとえ自分達以外の人と昼食を共にすることを選んだとしても、気を悪くはしないだろう。だが、一人で食べるとは言いづらい。

「えーっと…」

無意識に頬を掻こうと持ち上げた手を、周りのグループの間から伸びてきた手がガシッと掴まれ、そしてそのまま引っ張られた。あまりに強く引かれるものだから椅子が倒れてしまう。

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