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若狭は蘭のことを評価している。
常に冷静に物事を見て判断出来る目を持つと、
少年院に入る前にその資質を見出していたのだ。
現に出所してからというもの、六本木という
何とも危うい場所を兄弟2人で仕切る姿に
真一郎とは種類の違うカリスマ性を感じていた。
それがAに対してはこの有り様。
歳の差なんて考えてしまえば
ドツボにハマるに決まってる。
どんなに願えども1年で1つしか歳はとれないし、
そもそもそんなことが問題じゃない。
お前が好きになった女は、そんなこと
気にしねぇから正面からぶつかってやれよ。
Aはお前の好意がどういうものかなんて
まだ確信も持ててねぇんだから。
若いうちから逃げんのばっか
上手くなってもしょうがねぇだろ。
まぁ…焦らせた要因の1つでもある俺が
何か言ったところで、お前には届かねぇわな。
「アイツはもっとデカくなる。
その途中で何かあったとしても
Aがいるなら道を外したりしねぇよ。」
「…そうかな。」
微笑むAに小さく笑い返した。
以前に比べれば外を歩くようにはなったものの、
まだマンションの自室で1日を過ごすことも多い
蘭はベッドに横になりケータイを眺めていた。
Aとの通話履歴も消えてしまい、
メールのやりとりをしたのも去年の10月が最後。
蘭の誕生日にメールはくれていたものの
返事を返すことが出来ないまま…
外はすっかり2人が出会って
5度目の夏が巡っているというのに。
竜胆がAと会えばどんな様子かを
教えてくれることで安心はしていた。
この前、朝方Aの姿を見掛けた数日後に
何とも言えない顔をした九井が蘭を訪ねて来た。
いつもは下で報告だけして帰るのに
中々話を切り出さない様子に
首を傾げながらも部屋に招き入れる。
言葉を選ぶように話すのを聞くと、
尾行しているのがバレて一緒にご飯を食べたそう。
Aらしいなと、思わず表情を和らげる。
『あの人は蘭さんが会いに来てくれるのを
待ってるから早く顔を見せてやってください。』
そう続いた言葉に蘭は
目を瞬かせてジッとその顔を見つめる。
九井は視線を外しながら少し照れ臭そうに笑った。
『最近の蘭さんたちのこと教えてって
言われたから、詳細は伏せて話したら
すごくたのしそうな顔で聞いてて…
あの顔見たら、何か俺も絆されたみたいです。』
…全然変わってねぇなぁ。
俺らのこといつも心配してくれてんのに。
俺もこんなんじゃダメだわ。
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作者名：YUMi | 作成日時：2023年12月12日 16時
