検索窓
今日:24 hit、昨日:1 hit、合計:7,284 hit

55 ページ6

·




くしゃりと笑い、ジョッキを合わせる。



「仕事は大丈夫か??
 最近は変な客とか来てねぇの。」


「おかげさまでね。
 みんなが睨み効かせてくれたから
 最近はかなり紳士的な人ばかりだよ。」


「そ??」



若狭は目を閉じて
満足そうな表情を浮かべる。



「そういえばこの前久しぶりに万次郎くんに
 会ったんだけど、何か雰囲気変わったね。」


「そうか??
 相変わらずダチとはしゃいでるけどな。」


「わたしたちとあんまり歳の変わらない
 大人みたいな顔で笑っててね。
 何か驚いちゃった。」


「…へぇ。」



ふと何か考えるように視線を宙に向ける。



「俺らいくつになってもダチとつるんでて
 Aにしたらガキに見えるだろうけど、
 案外そうでもないんだぜ??」


「そんなこと思ってないけどな。
 みんなが変わらないでいてくれるの、
 わたしもうれしいくらいだし。」


「そ??それならいーけど。
 そういや、万次郎も来月誕生日だな。

 真ちゃん、ずっと大事にしてる
 バイクやるんだって意気込んでたわ。」

「うん、兄弟って素敵だよね。

 お兄ちゃんの想いが弟に引き継がれてその
 弟がまた下のコたちに想いを托すんだね。」


「俺らの想いはそうやって
 どんどん若いヤツらに受け継がれる。

 人が変われば道を外すヤツも必ずいる。
 でもそれを正してくれるヤツもいる。

 いくつになっても、
 見届けてやりてぇモンだよな。」


「男のロマンだね??」


「…まぁな。」


「こんな話、付き合ってた
 あの頃じゃ出来なかったもんね。

 大人になるのって何も
 悪いことばかりじゃないんだ。」


「それでも、昔の俺は
 カッコつけたかったんだよ。
 Aの前だけでは。」


「そんなことしなくても
 ワカくんはカッコいいのにね??」


「お前はホント…
 いや、昔から変わんねぇか。」


「ふふっ、わたしこう見えて正直なの。
 いつも真っ直ぐ生きていたいから。」


「…アイツが、このまま顔見せなかったら
 どうするつもりでいんの??」



目を伏せてそう切り出す。



「んー…どうしよっか。
 実はあんまり考えてないんだ。
 1回は連絡してみようと思ってるんだけど。」



Aの言葉を聞きながら若狭は
殴り付けた時の蘭の様子を思い出す。



完全に拗らせていた。



今まで欲しいと思ったモノが
手に入らなかったことはないであろう

その様子に小さな子どもが
泣いて駄々をこねる姿が重なる。




·

56→←54



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
135人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:YUMi | 作成日時:2023年12月12日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。