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くしゃりと笑い、ジョッキを合わせる。
「仕事は大丈夫か??
最近は変な客とか来てねぇの。」
「おかげさまでね。
みんなが睨み効かせてくれたから
最近はかなり紳士的な人ばかりだよ。」
「そ??」
若狭は目を閉じて
満足そうな表情を浮かべる。
「そういえばこの前久しぶりに万次郎くんに
会ったんだけど、何か雰囲気変わったね。」
「そうか??
相変わらずダチとはしゃいでるけどな。」
「わたしたちとあんまり歳の変わらない
大人みたいな顔で笑っててね。
何か驚いちゃった。」
「…へぇ。」
ふと何か考えるように視線を宙に向ける。
「俺らいくつになってもダチとつるんでて
Aにしたらガキに見えるだろうけど、
案外そうでもないんだぜ??」
「そんなこと思ってないけどな。
みんなが変わらないでいてくれるの、
わたしもうれしいくらいだし。」
「そ??それならいーけど。
そういや、万次郎も来月誕生日だな。
真ちゃん、ずっと大事にしてる
バイクやるんだって意気込んでたわ。」
「うん、兄弟って素敵だよね。
お兄ちゃんの想いが弟に引き継がれてその
弟がまた下のコたちに想いを托すんだね。」
「俺らの想いはそうやって
どんどん若いヤツらに受け継がれる。
人が変われば道を外すヤツも必ずいる。
でもそれを正してくれるヤツもいる。
いくつになっても、
見届けてやりてぇモンだよな。」
「男のロマンだね??」
「…まぁな。」
「こんな話、付き合ってた
あの頃じゃ出来なかったもんね。
大人になるのって何も
悪いことばかりじゃないんだ。」
「それでも、昔の俺は
カッコつけたかったんだよ。
Aの前だけでは。」
「そんなことしなくても
ワカくんはカッコいいのにね??」
「お前はホント…
いや、昔から変わんねぇか。」
「ふふっ、わたしこう見えて正直なの。
いつも真っ直ぐ生きていたいから。」
「…アイツが、このまま顔見せなかったら
どうするつもりでいんの??」
目を伏せてそう切り出す。
「んー…どうしよっか。
実はあんまり考えてないんだ。
1回は連絡してみようと思ってるんだけど。」
Aの言葉を聞きながら若狭は
殴り付けた時の蘭の様子を思い出す。
完全に拗らせていた。
今まで欲しいと思ったモノが
手に入らなかったことはないであろう
その様子に小さな子どもが
泣いて駄々をこねる姿が重なる。
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作者名:YUMi | 作成日時:2023年12月12日 16時