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「それこそ自分に何かあっても
 普段通りに生きてくしかねぇ。

 でもお前らはまだ若いから
 立ち止まっても誰にも責められない。

 だから、早く大事なことに気付けるように
 お前が兄貴のケツ叩いてやれよ。

 それはお前にしか出来ねぇからな、竜胆。」


「…っはい。」



涙でぐしゃぐしゃになった顔を
Aがハンカチで拭いてやり、やっと
見えたその笑顔に手を伸ばして頭を撫でる。



「早く来てくれないと
 わたしも待ってられないかもね??」


「っ姉ちゃん!!」



「お前ホント可愛いな、竜胆。
 特別枠決定だわ。」



Aと若狭にからかわれ、取り乱した竜胆が
落ち着くのを待ってその背を見送る。



「俺、アイツ結構好きかもしんねぇ。」


「珍しいね。
 ワカくんが歳下可愛がるなんて。」


「…老けたんじゃね??」


「それは間違いない。」


「んじゃ、買物行こうぜ。」


「はーい。今日はよろしくね!!」



並んで歩き出すとまだ高い
位置にある太陽が照らしてくれる。

その眩しさに目を細めて呟く。



「あなたに焦がれて、
 もし枯れちゃったとしても…

 また見つけてもらえるようにわたし、
 綺麗に咲いてみせるから。」


「枯れねぇよ、Aは。

 どんな状況になったって、
 ちゃんと上向いて咲ける強い花だから。」



綺麗な横顔を見つめる。



「疲れたら少しくらい
 下向いてもいんじゃね??
 そん時は俺らが一緒だ。」


「…わたしって恵まれてるよね。
 こんなに助けてくれる人がいるんだもん。」



そっと若狭の手を握り、頬を寄せた。



「小っ恥ずかしいこと言ってんなよ。」



白い頬が薄っすら赤らむのを
見られないように、握られた手を引いた。



心から大事に思うなら、
自分が特別になれなくてもいい。

ただこうして笑った顔が見れるなら
それ以上を望むことはない。

今の俺たちはきっと、
隣にいたあの頃よりも近い
場所でお互いに向き合えている。

Aのことが好きなくせに
ヘラヘラ笑ってそばにいた真ちゃんの
気持ちがやっとわかったなんて…

絶対、言ってやんねぇけど。

どうせ俺たちは結局
これから先もこうして変わらずに、
Aのそばにいることを
願ってしまうのだから。



買物を済ませてアパートに戻ると、
リビングのローテーブルを挟んで向かい合う。

男の人にしては華奢な若狭の手を借りて
早速、買ってきたマニキュアを塗った。



「やっぱりこの色にして正解だった!!」




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作者名:YUMi | 作成日時:2023年12月12日 16時

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