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「ソイツが普通にしてたら
 もう平気って思うか??」



若狭が言わんとしていることを理解した
竜胆は、ぎゅっと拳を握り締めて俯く。



「俺だってゆみが何て
 言われたのかまでは知んねぇよ。
 アイツそれだけは話してくんなかったし。
 でもさ…」



そこで言葉を止める。



偉そうに何言ってんだろうな、俺は。

最初にゆみを傷付けたのは他でもない、
付き合っていた頃の自分自身だというのに。



若狭の顔に自嘲するような笑みが浮かぶ。



「俺も昔、最低なこと言ったよ。

 俺の最後の女だ、ゆみ以上なんていねぇ
 って大事にしてたのに傷付けた。

 あの時と同じ顔してるように見えたから…

 2度とあんな顔して欲しくねぇって思った。
 そんでお前の兄貴にムカついたんだよ。」


「今牛さん…」


「…心だけは、傷付けたヤツにしか
 治してやれねぇモンだぜ。
 だからお前は、そんな後悔すんなよ??」



眉を下げる竜胆にやさしい笑みを見せた。



「ふふっ。
 ワカくんまだあの時のこと、
 気にしてたんだ??」


「…姉ちゃん。」


「相手がお前じゃなかったら
 この歳になるまで考えてねぇけどな。」


「愛されてた証だね。」



2人の目の前で穏やかに微笑むゆみ。



「竜胆くん、わたし蘭くんが好きだよ。」


「うん。」


「2人の前だと大人ぶってるけど
 実はそうでもないんだ。」


「…うん。」


「あの日、蘭くんの言葉に傷付いた。

 しばらくは会っても普通に
 出来るかなって心配してたの。

 でも、全然顔見せてくれなくなって…
 もっと傷付いた。

 向日葵だけドアノブに引っ掛けられてるの
 見て、よろこべない自分がいたの。

 わたしにとってうれしいのは、
 蘭くんが少し恥ずかしそうに笑って
 渡してくれるあの向日葵なんだって。」



ずっと歳上で自分より大人だと思っていた
ゆみの見せたその顔が竜胆の脳裏に焼き付く。



「兄ちゃんがごめん。

 俺が言ったって何にもならないけど、
 もう少しだけ待っててやって…

 姉ちゃんの大好きな向日葵、
 絶対に届けさせるから!!」


「うん、待ってるね。」



竜胆をぎゅっと抱き締めてその肩口で笑う。



「…あーぁ、竜胆くんも
 こんなに大きくなっちゃったんだね。

 少し前はわたしと変わらなかったのに。」



少しいじけたような
ゆみの言葉に竜胆の目が潤む。



「…大人って立場になると仕事も生活もある。
 周りに迷惑掛けるワケにもいかねぇ。」




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作者名:YUMi | 作成日時:2023年12月12日 16時

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