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「それなら、わたしの行きつけのお店
まだやってますけど行きます??」
「行くぞ。」
並んで明るくなった街中を歩く。
「穏やかになったな、この街も。」
行き交う人々を眺めながらそう溢す。
「何年か前はまだこの時間
半グレみたいな連中がうろうろしてたが、
今じゃすっかりお行儀のいい街だ。」
寂しげにも見えて
どこかホッとしたような顔をする。
「大したモンだよ、お前の惚れた男は。」
「…加倉井さん、引退でも考えてるんですか??
隠居前のおじいちゃん
みたいなこと言ってますよ。」
くすくすと笑いながら
そう言うAのおデコを叩く。
「痛っ…!!」
「バカ言ってんじゃねぇ。
俺は死ぬまで現役だ。」
「…現役でいるかはともかく元気でいてください。
わたしがしあわせになるの、
誰よりも加倉井さんに見ててもらわないと。」
そう微笑むAにほんの一瞬目を瞬かせる。
「…んなの、当たり前だろ。
だから早く納まるところに納まれよ。」
「ふふっ、はい。」
見慣れた赤提灯の引き戸を開けると
元気のいい声に迎えられる。
カウンターに座りいつものセットを頼み、
運ばれてきたラーメンを手を合わせてから啜る。
加倉井もうまいとよろこんで食べ進めていく。
「2人とも笑った顔がよく似てるなぁ。
まるで親子みたいじゃないか!!」
店主の何気ない言葉にギョッと目を
見開いた加倉井にくしゃりと笑う。
「そうでしょ??
いつもお世話になってる、大好きな人なの!!」
「そうかい!!」
豪快に笑う店主に気恥ずかしくなり
勢いよくチャーハンを掻き込む。
その様子をやさしく見つめた。
当然のように支払いを済ませる
加倉井に苦笑いを溢して店先で別れる。
まだ眠くないと足を向けた懐かしの公園で
ブランコに座り、ゆらゆらと揺れた。
「もう5年になるのかぁ…」
朝方のこの公園で蘭と出会った夏。
竜胆以外だったら1番近くでその成長を
見ていたと言っても過言ではない。
Aの人生で2度目の恋。
たくさんの心配ごとやすれ違いもあったが
その全てが忘れられない日々。
思いを馳せていると、すっかり
嗅ぎ慣れた香水の匂いがした。
「お姉サン、こんなとこで何してんのー??」
ふわっと後ろから回された腕は
Aの体をすっぽりと包み込む。
「ここで綺麗な男のコに
会った日のこと思い出してたの。」
「…へぇ。それってどんなコ??」
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作者名:YUMi | 作成日時:2023年12月12日 16時