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でもきっと必然で、運命だった。
母さんが昔、1度だけ父さんの話してくれたんだ。
愛が大きい人だった、って。
その時の母さんの顔が今でも忘れられないの。
すごく、やさしい顔してたから。
離れた理由はわからないけど
ずっと大切に想ってるのが伝わってきた。
結局、母さんはわたしを置いて
いなくなってしまったけど…
2人の愛し合った証がわたしの存在なら、
これから先も胸を張って生きていく。
それが何よりの親孝行だと思うから。
「だから他の人に何て言われても…
生まれ変わる時が来たらまた、
わたしがいいんだ。」
加倉井の持って来てくれた向日葵の花束は
入口の横にある花瓶に飾られている。
中でも誇らしく咲く1輪に頬を寄せる。
そんなAを店長だけが
目に涙を浮かべて見つめていた。
初日に続き連日お祭り騒ぎで
イベント期間は早くも折り返していた。
スタッフもキャストも目が回りそうな
忙しさの中でも心からたのしんでいるようで
笑みが絶えずにいい雰囲気だ。
「そういや、お前が世話になってる
元黒龍のヤツらはいつ来るって??」
「加倉井さんがくれたチケットは
最終日限定になってましたよ??
特別招待って書いてあったので、
3人とも予定空けてくれてるみたいです。」
「そういや、忘れてたわ。
最終日のチケットは別にしたんだ。
Aの上客しか呼ばねぇつもりでさ。」
「そういうことだったんですね。」
「サプライズのつもりがうっかりしてた。
で、灰谷兄弟から連絡は??」
「連絡はあるけど
いつ来るつもりかわかんないですね。
都合つけてくれてるところかもと思って
特に催促もしてないですけど。」
「なら、こっちから逆指名するか。
最終日前日で。」
「…何か企んでます??」
「大したことじゃねぇよ。
お前の惚れた男がどんなモンか見たいだけさ。」
大きく口を開けて笑う加倉井にAも微笑む。
「圧迫面接みたいなのはやめてくださいね??
まだ2人とも未成年なんだから。」
「わかってるよ。」
空になった加倉井のグラスに酒を注ぐ。
「Aちゃん、席には
付かなくていいから少し顔出せる??」
「はい、今行きます。」
呼ばれて立ち上がる背中を見送る。
「…そうは言っても
少しくらい試してやりてぇだろ。
それが親心ってモンなんだよ。」
呟いた声は店内のBGMに掻き消された。
営業を終えると加倉井は
ラーメンが食べたいと言って笑う。
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作者名：YUMi | 作成日時：2023年12月12日 16時
