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店長に手を振られて店の外に出ると
一際目を引く姿があった。
「Aチャン。」
「蘭くんだ。どうしたの??」
「クラブ行ってたから迎えに来た。お疲れさま。」
「ふふっ、ありがとう。」
いつものように左隣に並ぶとそっと手を握られる。
「これ、何かイベントでもやんの??」
店先に置かれた告知ボードを指差して首を傾げる。
「今日の夜からオーナー主催のイベントなんだよ。
指名料取らないで入場料と飲食代だけで
誰でも好きな女のコとお話出来るの。」
「へぇ。それ、店にしたら損失じゃねぇの??」
「新しい顧客をつけるための施策なんだよ。
キャストのNo.入替えの前準備って感じかな。」
「ふーん。」
少しの間を空けて笑みを浮かべると
Aの顔を覗き込む。
「俺も竜胆と遊びに行こうかなー。」
「いいよ!!招待用のチケットもらってるし
お酒は出せないけどそれでよかったら。
オーナーも蘭くんに興味あるみたいだし。」
「チケットは自分で買うからいーよ。
アイツらにあげたら??」
「真ちゃんたちのこと??
3人分は別にもらってるから大丈夫だよ。」
カバンからチケット2枚を取り出す。
「はい、これね。」
「ありがと。」
蘭はチケットを財布に仕舞うと頬を緩める。
「Aチャンが働いてるとこ見れんのたのしみ。」
「そう??
わたしはイベント期間中オーナーの
テーブルに付いてる予定だから
みんなのフォローみたいになると思うよ。」
「じゃあAチャンとは話せない??」
「オーナーのテーブルに一緒に
座っちゃえばいいんじゃないかな。
わたしの招待客だから大丈夫だと思う。
来る日連絡してくれるとうれしいな。」
「うん、わかった。」
アパートの前でそっと手を離すと
向かい合うように立ち、お互いの顔を見つめる。
どちらからともなく、小さく笑みが溢れる。
「今、何考えてる??」
「んー…今日も蘭くんの顔が見れて
しあわせだなって思ってた。」
「…俺も。」
腰を屈めておデコ同士を
くっつけると柔らかく眦を下げる。
「しばらく忙しい??」
「うん。今月中は忙しいかな。」
「そっかぁ。来月は俺とデートしてくれる??」
「する!!」
「どこ行きたい??」
「…悩むなぁ。でも蘭くんと一緒なら
どこ行ってもたのしいと思う。」
「何か思いついたら教えて??
俺も考えとくけど。」
「うん!!」
「じゃ、俺帰るわ。」
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作者名：YUMi | 作成日時：2023年12月12日 16時
