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久しぶりに感じる温もりに心が満たされた。
「…俺、そろそろ帰るね」
「来てくれてありがとう、蘭くん。」
「また、来るから。」
「うん!!待ってるね!!」
うれしそうに微笑み、手を振って蘭を見送る。
階段を降りるとまだドアの前にいる
Aに目尻を細めて手を振った。
背中を向けて歩き出した途端に
安心したのか気が抜けたように緩む頬。
いつもよりも早い心臓の音が大きく聞こえる。
…Aチャン、好き。
やっぱこの気持ちは、ホンモノだった。
その証拠に、今こんなに満たされてる。
もう傷付けたりしねぇからこれからまた
そばでその笑顔を俺に見せてほしい。
久しぶりに肩の力が抜けてマンションに帰る
頃には、すっかりいつもの蘭に戻っていた。
「竜胆、ただいまー。」
「兄ちゃん、おかえり。」
リビングでテレビを見ていた竜胆に
後ろからぎゅっと抱き着く。
ギョッとしたように振り返ると
その穏やかな顔を見て尋ねる。
「会えたの??姉ちゃんに。」
「…うん。」
目尻を細めてくしゃりと笑った
蘭が頷いて、竜胆はその肩を叩いた。
「…よかったな、兄ちゃん。」
「やっとあれ、Aチャンに渡せる。」
「だな!!」
自室に置かれたままの綺麗に
ラッピングされた小さな箱。
去年のAの誕生日にと
2人で頭を突き合わせて選んだピアス。
「頑張れよ、兄ちゃん。」
「…ありがと、竜胆。」
そう、微笑み合う。
7月後半
No.1に恥じない売上げを叩き出し、先月の
給料が渡されてAの借金は無事完済となった。
ケツ持ちの加倉井が主催でイベントを
開くことになり、告知が大々的に行われる。
盆明けから月末まで指名料は取らずに
飲食代と入場料さえ払えば、新人だろうが
人気嬢だろうが気に入ったコと酒が飲めると。
これはAがお店を抜けた後のことを
考えた施策も兼ねている。
値段を落とすことで新たな顧客を増やすのと
キャストたちへのNo.入替えを意識させて
接客レベルの向上を促す。
期間中には低価格故に輩も入り込むであろうと、
連日加倉井が店に詰めて客の選定をするそう。
Aは常に加倉井のテーブルに付くことに
なっていて、個人で客は取らない条件だ。
もちろん、挨拶に出向くつもりではいるが。
日々の営業の合間にイベントの準備を進めていき
いつもより慌ただしい8月となった。
「お疲れさまでした。」
「Aちゃん、お疲れさま!!
今日から忙しくなるけどよろしくね!!」
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作者名：YUMi | 作成日時：2023年12月12日 16時
