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そのすぐ後に細い腕が
背中に回された感触と鼻を啜る音。



「蘭くん、もう会いに来てくれないと思ってた…」


「…ごめんなぁ。」



困ったように眉を下げてそっと頭を撫でる。



「…Aチャン、ぎゅってしていい??」


「っうん。」



両腕でAを抱き締めると浮かんだ涙が
溢れないように小さく息を吐いた。



「…俺、酷いこと言ったよなぁ。
 怒ってる…??」



不安気な声に首を横に振る。



「怒ってなんかないよ…
 ただ蘭くんが会いに来てくれなくて
 寂しかったの。嫌われちゃったかなって…」


「Aチャン、顔見せて…??」



そっと頬を撫でる手で上を向かせると
大きな目から次々と零れ落ちる涙。



あぁ、綺麗だ…

泣いてる顔が、こんなに美しく思えるなんて…
きっと後にも先にも、この人だけ。



感嘆するように息が漏れる。

そっとおデコを合わせて真っ直ぐに見つめ合う。



「…勝手に苛ついて、Aチャンに
 酷いこと言って傷付けた俺に、
 泣くほど会いたいと思っててくれたの…??」


「ずっと会いたかったよ…
 いつも向日葵ありがとう。

 すごくうれしかったのに、
 蘭くんが少し恥ずかしそうに笑って
 渡してくれる向日葵とは何か違くて…

 わたしが悪かったの。
 歳上だからって変にお姉さんぶって
 物わかりいいフリしたから。」


「…Aチャン、それは…」


「でも!!でもね…
 全然、物わかりなんてよくなかった。
 もう、謝ったりしなくていいから…」



蘭の言葉を遮って服をぎゅっと握る。



「どこにも行かないで…お願いだから…」


「…うん。俺はどこにも行かないよ。
 Aチャンと一緒にいるから。」



うれしそうに細められた目尻と
甘く蕩けそうなやさしい温度を宿した紫。



「…蘭くん、わがまま言っていい??」


「んー??」


「わたしね、もうすぐ綺麗になれるから。
 だからそれまで、待ってて欲しいの。」


「俺はいくらでも待てるよ…
 その時が来たらさ、俺の話聞いてくれる??」


「うん…約束する。」



頷いたAにそっと手に
持っていた向日葵を差し出す。



「…遅くなってごめん。」


「ありがとう…蘭くん。」



受け取った向日葵を胸に抱いて
目尻をくしゃりと細めて蘭を見つめると
照れたように視線を逸らされる。。

そんな様子が愛おしくて
もう1度その胸に頬を寄せて目を閉じる。



「大事にするね。」


「…うん。」



2人の間に穏やかな時間が流れる。





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作者名:YUMi | 作成日時:2023年12月12日 16時

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