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そのおかげか仕事にも
勉強にも励むことが出来た。
条件通りの売上をキープしつつ
新人の嬢を自分と一緒にテーブルに付けて
顔見せを兼ねながら丁寧に指導をする。
No.2の亜希は元々Aよりも歴が長いため
指導と言うよりは細かい気遣いの面で
アドバイスをしながら様子を見ていた。
「え、そんなことまでしてたんだ!!
今度からあたしもそうしてみるね。」
「少しの違いですけどお客さまからの
印象も変わると思いますよ。」
「ありがとう、Aちゃん!!」
言ったことは素直に受け入れてくれる
亜希とは以前と変わらず関係も良好だ。
いよいよ夏のネイリスト試験も日程が
近づいていることで空き時間には
みんなの手を借りて復習をしている。
試験にはモデルが必要になるため、
前回と同じく若狭に頼んだ。
休みの今日は本番で使う色とデザインを
考えるのに付き合ってもらう予定だ。
迎えに来た若狭が外で待っていると、
取り巻きを引き連れた竜胆が通り掛かる。
「…今牛さん。」
「…よぉ。
腰抜け兄貴はどうしてる??」
意地悪く笑う若狭の物言いに
微妙な表情を浮かべる。
後ろを振り向き、先に行くように
告げると若狭と向き合う。
「俺も兄ちゃんに何て
声掛けたらいいのかわかんねぇんだ…」
「まだ日和ってんのか、あのガキは。」
乾いた笑い声を上げる。
「あの日、兄ちゃんと姉ちゃんに
何があったのかは聞かなくても想像つく。
でも…こんなに会えなくなるようなこと、
兄ちゃんがホントに言ったの…??」
信じられないとその顔が語っていた。
初めて会った時から蘭はAに
普段の横暴な態度も見せず、
そばにいてくれる時間を大事に
慈しんでいるように竜胆は感じていたから。
それをいくらキレていたとしても、
心無い言葉を向けるなど想像が及ばない。
「…言った方がそんなになってたら、
言われた方はどうしたらいいんだろうな。」
ポツリと呟くように落ちた
言葉に竜胆は目を瞬かせる。
「…え??」
「お前らから見ればもう大人に
見えるのかもしんねぇけどさ、
俺らだってそんな大人じゃねぇってこと。
そもそも歳とか関係ないと思わねぇか??
子どもだって大人だって、悪意を持った
言葉は向けられたヤツの心を傷付ける。」
咥えていたタバコに
火を点けて煙を吐き出す。
「殴られたくらいなら治れば
忘れられるかもしれねぇけど
心なんて誰にも見えねぇだろ。」
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作者名：YUMi | 作成日時：2023年12月12日 16時
