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ゆったりとした口調でそう話す蘭に
Aは笑い声を溢した。
「なにそれー。」
「わかんねー。」
「…でもちょっと嬉しかったかも。
気晴らししたい気分だったし!!」
Aの言葉に信号で止まった蘭は振り返った。
「…何かあったかー??」
「うん、ちょっとね。
1人でいるの寂しかったかもしれない。」
Aはそう言うと蘭の腰に腕を回して
背中にほっぺをくっつけた。
「…お前ホントそういうとこ、ズリぃ女ー。」
「ごめんね。でもありがとー、蘭ちゃん。」
「…別にー。そういうのも悪くねぇかもな。」
蘭は信号が青になり、走り出す。
「…抗争あんだろ、近々。」
「そうみたい。」
「随分他人事みてぇな言い方するじゃん。」
「いっつも無茶苦茶言って
わたしのこと振り回すのにね。
今回のことはわたしに何も話がないの。」
「…ふーん。新しい参番隊隊長が絡んでる??」
「…さぁ。今のわたしにはわかんないや。
だからみんなのことよく見て、
しっかり守らなくちゃね。」
「まぁ、マジでやり合うなら俺も
竜胆連れて観に行くからなー。」
「…そうならないといいなー…」
酷く心許なそうな声でそう言った
Aに蘭は笑った。
「…また何かあったら
お前からも連絡すればー??
気が向いたら蘭チャンの後ろ
乗せてやるからなぁ。」
「ふふっ。その時はお願いしようかなー。」
蘭はしばらくバイクを走らせた。
特に目的地もなく走り、ポツリポツリと
交わす会話は酷く心地よかった。
2時間ほどそうして走ると満足したのか、
蘭はAを家に送り届けた。
「楽しかったかー??」
「うん。蘭ちゃんの後ろ楽しかった。」
バイクを降りて側に立つAに問いかけた
蘭はその返事を聞きニヤリと笑った。
「蘭チャン
Aのこと気に入ってんだぞー。」
「わたしも蘭ちゃんといるとホッとする。」
微笑んでそう言ったAにほんの少し
目を瞬かせた蘭はその腕を引いた。
Aは特に抵抗せずに
蘭の腕の中に収まった。
「連絡来なかったらまた会いに来るわ。」
「楽しみにしてるね。」
思うような返事をしないAに蘭は
内心溜息をつくと頬にキスをして帰って行った。
Aは手を振って蘭を見送った。
「…優しいね、蘭ちゃん。」
もう見えなくなった背中に
そう呟くとアパートに入った。
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作者名:YUMi | 作成日時:2022年7月23日 12時