31 ページ32
·
「ごめん、
他に思い付くとこなくてここ来ちゃった。」
「ううん、帰ってきたんだなーって感じする。」
2人は砂浜に並んで波打ち際を見つめた。
「…3年前、ここで万次郎が
プロポーズしてくれた時
飛び上がるほど嬉しかったの。
でもね、何かこの辺が
突っかかって苦しかったんだよね…」
「…うん…」
「万次郎のプロポーズ素直に受け止めて隣に
並べない自分に気付いてたくさん、考えた…」
「…うん…」
「結果としてはこの3年、万次郎から
逃げてたみたいになっちゃったんだけど…」
Aはそこで言葉を切ると万次郎の手を握った。
「万次郎は3年前にここで言ってくれたこと
今でもそう思ってくれてる??」
「…変わってねぇよ何にも。
Aが俺じゃない人選んでも
これから先もきっと変わんねぇ。」
「…ありがとう。」
そう微笑んだAは綺麗だった。
「わたしの気持ち、聞いてくれる??」
「…うん、どんな答えでも
今度はちゃんと受け止めるから。聞かせて。」
万次郎はAの手をそっと握り返した。
「万次郎とはいつからか一緒にいて
それから隣でずっと万次郎を見てきた。
楽しかったこと、嬉しかったこと、
悲しかったこと、辛かったこと、
みんなみんな一緒に過ごしてきた。
わたしは昔から万次郎に振り回されて
でも自分で選んで着いてきた。
本当に幸せだったと思う。
万次郎はわたしにとっての唯一だって信じてた。
これからも離れることなんてないって。」
Aは目を伏せた。
「万次郎がわたしたちの前から消えた時…
あの時わたし心が折れちゃった。
今まで着いて来いって言ってくれてた万次郎が
わたしに黙ってどこかに行ってしまって
もう着いて行けないんだなって思ったの。」
「…うん。」
「痛いのも辛いのも平気だと思ってた。
でも、心細いとか寂しいのって別なんだね。
圭介も堅もみんなもいてくれたのに
万次郎がいないだけで不安になった。
20歳に帰って来た万次郎を迎えた時に
昔みたいに笑ってくれてるの見て、安心した。
もうわたしがいなくても大丈夫だなって。」
思い出すように優しい表情をするAに
万次郎は胸が苦しくなった。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 79人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：YUMi | 作成日時：2022年7月23日 12時
