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「事故んなよ。兄ちゃん。」
「久しぶりでもさすがにそれはねーわ。」
クラクションを鳴らして竜胆は走っていった。
蘭もそれを見てバブを走らせた。
田舎街を抜けて所々ビルが光る街中を進む。
まるで日本にいた頃に戻ったようだった。
Aは流れる景色を見ながら
蘭の細い腰にギュッと抱きついた。
蘭はしばらく走ると
見晴らしのいい場所でバイクを停めた。
川の水に人工的な光と月が反射していた。
「懐かしいよなー。
前はよくこうして夜にバイク走らせてたよな。」
「うん。
さっき蘭ちゃんの背中見て同じこと思ってた。
あの時からずーっと蘭ちゃんは変わんないね。」
「お前もな。」
どちらからともなく笑みが溢れた。
「蘭ちゃん、いつもしんどい時
こうして隣にいてくれてありがとう。」
「蘭チャンいい男だろー。
こんなに尽くすヤツ中々いねぇよ??」
「ホントにそう思う。
昔からわたしのこと振り回すのは万次郎で
困ってると圭介が最初に駆け付けてくれて
その後、蘭ちゃんと竜ちゃんが
めいっぱい甘やかしてくれるんだよね。」
川を見つめたままそう言った。
蘭は横目でそんなAを見た。
「…幸せなんだよね、わたし。
たくさん、愛してもらえてるんだよね。」
「A。」
「日本に帰ったらたくさん
話さなきゃならない人たちがいるんだ。
今のわたしの気持ち、ちゃんと伝えてくるから。
そしたら蘭ちゃんに会いに行くね。」
「…ん、待ってる。」
頷いた蘭はAの頭を撫でて
2人は静かに川の水が流れていくのを見ていた。
しばらくそうしてバイクに跨ると
蘭たちが泊まっているホテルに向かった。
3人で昔話に花を咲かせて
お酒を飲んでいるうちに眠ってしまったAを
優しく見つめた蘭と竜胆は小さな声で話した。
「…まさかこんなとこでAと会うなんて
人生何があるかわかんねぇもんだなー。」
「ホントだよな。
海外ダルいと思ってたけど今回だけは
来てみて良かったな、兄ちゃん。」
2人は上機嫌でグラスを揺らした。
「…いきなり消えたって聞いた時は
ガラにもなく焦ったわ。」
「スマホ1台ぶっ壊してたもんな。」
ふっと口元に笑みを浮かべた蘭は
ソファで丸まってすやすやと眠る
Aを優しく見つめた。
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作者名：YUMi | 作成日時：2022年7月23日 12時
