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バイクのエンジンを吹かして蘭は走り出した。
竜胆もそれを見送り、六本木に帰って行った。
Aは蘭の背中を見つめて
安心したように息を吐いた。
「…はー。終わったぁ。」
「ご苦労さん。
やっぱ強ぇなぁ、Aは。」
「ありがとう。
また蘭ちゃんに助けてもらっちゃったね。」
「俺はお前から連絡来るの健気に
待ってたんだけどなー??
Aチャンは中々連絡くれねぇし??」
「…色々考え事しちゃってて。」
「ま、顔見れて良かったわ。
おまけに大暴れしてるとこも見れたしなぁ??」
「…恥ずかしいからやめてよ、蘭ちゃん。」
「やっぱいい女だわー、お前。
蘭チャン惚れちまったかもしんね。」
小さい声でそう言った蘭に
上手く聞き取れなかった。
「なー、このまま
蘭チャンとどっか行っちゃわねぇ??」
「どっかって??」
「俺らしかいないとこー。」
「…そんなところがあったら、
いつか行けるといいね。」
Aの言葉に笑い声を上げた
蘭はアパートの前に着くと言った。
「女なんてよー、
俺の顔ばっか見て擦り寄ってくる
つまんねぇヤツばっかだったのになぁ。
お前に振り回されんのは
悪くねぇなって思うの。」
「…蘭ちゃん。」
Aは蘭を見上げた。
蘭はふっと優しく笑ってその頭を撫でた。
「こんなん、蘭チャン初めてだわ。」
そして大きな目を瞬かせる
Aの頰にキスをした。
今まで何度かしたおふざけのようなキスではなく
優しく想いを伝えるような…
Aはいつになく優しい蕩けそうな目で
自分を見る蘭に困ったように笑い返した。
「またなー。」
Aの様子など気にせず
上機嫌で蘭は手を挙げて帰って行った。
Aはその背中が見えなくなると
ケータイを開いて堅の不在着信に折り返した。
「病院にいるの??みんなのケガの具合はどう??」
『マイキーも一虎も場地も大した
ケガじゃねぇから手当終わり次第家送ってく。
お前は大丈夫か??A。』
「うん。ケガも擦り傷くらいだから。
今日はさすがに疲れたからこのまま
寝ちゃうから、明日みんなのとこ顔出すね。」
『おう。
今日も最高にカッコよかったぜ、A。』
「ありがとう、堅。ゆっくり休んでね。
みんなにもよろしくね。」
Aは通話を切り、シャワーを浴びて
寝室に向かうとすぐに泥のように眠りについた。
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作者名:YUMi | 作成日時:2022年7月23日 12時