月のメロディー〈O×S〉 (ページ9)

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あの花壇に続く道。

いつもなら花壇の上に立って歌っている彼が、今日は座っていた。

　「智くん？」

智「...あっ、翔くん」

　「どうしたの？歌わないの？」

そう聞くと、少し笑うだけだった。

智「...今日、調子でなくって......」

　「そうなんだ......」

まぁ、調子悪いときもあるよね。

　「...ねぇ、知ってる？明日、新月なんだって」

智「...うん」

　「月、見れなくて残念だよな...」

智「でも...また見えるから」

青く色づいた瞳で、新月前の三日月を見る。

その目は、少し潤んでいるようにも見えた。

　「...あっ、明日の約束覚えてる？」

智「どっか連れてってくれるんでしょ？」

　「そう。楽しみにしててよ。俺、計画立ててるからさ」

智「分かった...！楽しみにしてるね」

にこりと笑った顔には、初めて出会ったときと同じ温もりがあった。

智「...翔くんってさ。太陽と月だったら、どっちが好き？」

　「何、急に？...どっちかなぁ。......どっちかって言うと、太陽かな？」

太陽は、暖かいし、太陽のいい匂いがする。

月は、冷たそうで、でも綺麗で。

どっちも、好きだな。俺は。

智「そっか...翔くんらしい」

　「うん...」

智「......じゃあ、そろそろ行くね？」

智くんが手を出してきたので、俺もそれに応えて握り返した。

ひんやりとした手の冷たさが、体全体に伝わる。

　「...じゃあ、明日」

なんで...握手なんて？

変な人だな...智くんは。