【東京喰種】モノクロ狐番外編【男主】 (ページ7)

今日:4 hit、昨日:28 hit、合計:9,374 hit

『憧れ』ページ7

ＮＯsaid

「──には憧れた人とか居る？」

捨てた名前を呼ばれ、コブは眉間に皺を寄せる

何故知っているのかは考えるだけ無駄だが、その名を呼ぶ理由が分からず不機嫌になる

「いねぇよ」

普段の口調になるが彼は薄い笑みを浮かべるだけ

「お前の事だろうから居ないだろうとは思ってたよ」

彼の目は風のせいで髪に隠れている

「──にはいるのかよ」

この名は“盾”と呼ばれる３人と狐しか知らない

普段呼べば確実に殺されるが、相手も自分の名を呼んだのだからおあいこだ

「居るよ、でも絶対に届かない」

目的が出来れば満足するまで求めるのに、こうも簡単に諦めるのに驚く

山登りが好きな“ヒト”か“喰種”が来そうな山の頂上にある展望台で影乃は遠くを見る

「･････････“ヒト”に憧れてんだ

堂々と日の光を浴び、学校とやらに通っていろんな事を学び、友だちと馬鹿騒ぎをする

成人式とやらをして大人の仲間入りをして、いろんな道を歩く

そして何より────」

コブにベロを出し、にんまりと嗤う

「“ヒト”が食べている『食』に興味がある」

興味本位で“ヒト”の食事を食べてみたが

それは力の糧になること無く、毒へと変わった

「まあ、“喰種”(俺たち)には一生理解出来ないがな」

遠くを見る影乃は暗い表情をしている

「一度だけでいい

俺にも“ヒト”と同じ味覚が欲しい

────なーんちゃって、どう？俺の演技」

パッと笑みを浮かべ、影乃はケタケタと笑い出す

「アッハハハハ！そんな顔をするなよコブ

憧れてんのは本当だけどあそこまで思ってねーよ」

しかめっ面なコブは知っている

影乃が昔の名を呼ぶ時は本心を言う時だ

その時は滅多になく、密かにコブは嬉しがっていた