【東京喰種】モノクロ狐番外編【男主】 (ページ49)

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『墓守』ページ49

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────もし、貴方の大切な人が世界から消えたなら貴方はどうしますか？

喜ぶ狐は答える。
「私もこの世界から消えましょう」

怒る狐は答える。
「死ぬ」

哀しむ狐は答える。
「やりたい事終わらせてから逢いに行く」

楽しむ狐は答える。
「消した世界を怨み、ぶっ壊す」

そして、楽しむ狐以外の狐たちは言葉通りになった。残された狐はひっそりとある墓を守っていた。
この世に未練は無いが、なぜか彼らは再び集まると期待していた。偶に墓荒らしまがいな輩が来るが賢い狐はあれよあれよと追い出した。

影乃が待ち望んでいた世界崩壊は“元”ヒトの活躍により、阻止された。

影乃がこの世から去った八年後を見て、彼はなんと言うだろうか。
平和な世に中指を立てるのだろうか。

ホッキョクギツネであるコリは野生なら三～六年、飼育されていれば十五年は生きられると言われている。しかし、影乃に出会ってから十五年以上経っているが衰えた気も衰弱している感じもしなかった。

最後の別れとなった抱き締めた行為に何かしたのかと考えるが、見た事しか信じない影乃には無理だと思う。

結局は命尽きるまで彼らの墓を守って過ごそうと決めた。

「･･･狐？」

餓死する寸前に見た景色は心を奪われた。

母と共に小さな箱に詰められ、何とか母が逃がしてくれたがどうすればいいのか分からないコリは腹を空かせ倒れていた。

血の匂いに誘われた先には全身べったりと返り血が付いている少年が居た。無傷とは言えないが再生する皮膚より足元に落ちている死体に意識が行く。

ギラギラと絶対に生きてやると語る眼差し。腕が取れようが絶対に殺してやると伝わる殺意。

飼い主とペットより、相棒より、家族より、一心同体より、身体の一部になりたいとコリは願った。

ザァと目を瞑る程の強風から目を墓に向けると死んだはずの影乃が本人の墓の前に立っていた。

「コリ、おいで」

たったかと走りそのまま影乃の胸へと飛び込む。いつもの新緑の匂いと微かに匂う血を肺いっぱいに吸い込んだ。

「なァ、コリ
お前に頼みがあるんだ」

どんな無茶な頼みでもお易い御用だ。ドンと来い。
そんな気持ちを理解したのか影乃はフッと笑う。

「俺たちの命あげるよ

それまでこの甘ったるい世界で待ってくれ

絶対に迎えに行く」

再び強風が吹き、目を開けた時には彼の姿は無かった。