【東京喰種】モノクロ狐番外編【男主】 (ページ25)

今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:9,348 hit

『狐兎』ページ25

･

狐兎(コウ)と名付けられた女の一日は不規則に始まる。ヒトの世界で生きる彼女は絵描きとして働いている。とある有名な小説家に気に入られ、小説の表紙を書く日々だ。

彼女が人々に恐れられる“喰種”と言うのは秘密の話。知られたが最後、彼女はただ知られた者の行動を黙って見つめるだけ。

ただ彼女は仲間の元へと行き、泣き出すばかり。それを呆れて見ているのは“盾”と呼んでいる彼と、同じ“盾”である“喰種”の男。

それからは離れた者との思い出を思い出しながら白いキャンバスへと色付けていく。
涙を流し、白から色とりどりに変化する。

“盾”の中に入っているがコウは影乃の盾になった事は一度もない。ただ、彼らの後ろを追い掛けるだけ。

ただ、彼女は描きたかった。どんなに残虐な事をしても、どんなに悲劇を生もうとその姿はどんなものにも勝る美しさが存在していた。

見る人によっては否定する者の方が多いだろう。しかし、影乃の後を追い掛ける者は皆、彼の姿に魅了された者たち。

その姿さえコウは美しいと思えた。

絵を描き、眠り、食事をし、絵を描き、眠り、依頼された絵を描き、影乃に呼び出され、絵を描き、眠る。

コウの世界は影乃のお陰で充実した日々になった。危険な状況になる場合もあったが、それは全て影乃が胃の中へと押し込んだ。

いつか最高傑作を完成させようと今日も彼女は影乃を見つめる。眠りにつく前にコウは未完成の作品に色を付けていく。

行き詰まった時に外を見れば、空は薄らと明るく鳥は鳴く。

大きく腕を伸ばしベッドへと潜り、満足せずにコウの一日は終わる。