【東京喰種】モノクロ狐番外編【男主】 (ページ18)

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パクパクと人魚の様に口を開閉するだけで何も言わない女性を見ながら、慌てて引っ込める魔の手を掴む。

「な、何をするのだね！？」

「いや〜、あまりにも距離が近かったので親しい仲かと思いまして

座れる席があるのに“わざわざ”彼女の後ろに“ぴったり”くっついてるなんて親しい以外に見えなくって

もしや違いましたか？」

｢わざわざ｣と｢ぴったり｣を強調し相手の出方を見定める。これで否定すれば彼は｢怪しい者｣になる。

周りは完全に傍観者だ、助けようとしない臆病者ばかり。女性をドアと俺で挟み、｢怪しい者｣の手を掴んだまま俺は見つめる。

･･･これは何の罰ゲームだろうか、これが美女なら俺は歯の浮くような言葉が出てくるのに、おっさんと対面して何の得があるのだろうか。

「い、いや

彼女の具合が悪そうだったから解放してあげようと思ってな」

｢そうだろ？｣と彼女に同意を求める。すると彼女は震えながら俺の背中の服を掴み、コクリと頷く。

「あ、そうだったんですか

俺の勘違いでした、すんません」

あっさり引き下がる俺に車内はドン引きしたような空気へとなる。なんだよ彼女がそうだと肯定したんだ、ならこれは俺の勘違いになるだろ。｢ありえない･･･｣や｢おいおい･･･｣と落胆する声ばかりだが、ここで彼女が否定すれば助けてあげたのに。

ちょうど駅へと到着する。ここは降りた事ないな丁度いい、胸糞悪いまま乗り続けるなど俺は鋼メンタルではない。

「過去の話を信じてもらうなら“証拠”が必要だけど･･･

証拠隠滅って簡単だよね」

車内から足を踏み出し、おっさんへとさっき撮った証拠写真を見せびらかす。それを見たおっさんは顔を青ざめるが、俺はそのまま削除ボタンを押す。

それに対し、怯えていた彼女や乗客、今から乗ろうとしている奴らは俺を凝視する。

「まさか介抱しているのに邪魔な俺が入り込んでしまってホント申し訳ない」

ペコリと頭を下げそのまま改札へと向かう。扉が閉まる音と同時に｢助けて｣と今にも消えるような声が聞こえた。

遅いよ、あの時否定する勇気があれば俺は助けたのに彼女は俺の手を拒否した。そこまで正義感は持っていないのでこれでこの話はおしまい。

ここには何があるのかな？予定外だが嬉しい出来事だ。