【東京喰種】モノクロ狐番外編【男主】 (ページ17)

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『電車』ページ17

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電車は好きだ。

チラホラヒトが居ても気にしない、俺が気にしなければいいだけの話なのだから。身を任せ、身体が揺れる時は結構気に入っている。

しかし、必ずどこかに争いは生まれる。ギュウギュウ詰めの車内では、多くのヒトに圧迫され身動きが出来ない。胸を触っただのケツを触っただの、それが本当なら告発者はお手柄だと褒められるがもし誤解なら告発された側は恨みを持ってもおかしくない。

この寿司詰め状態の時に赫子を出したらどうなるかとワクワクするが、顔バレする確率が高いので妄想だけで留めておく。

耳が良いお陰でいろんな会話が聴けるのも楽しいものだ。主婦の会話、恋人の会話、夫婦の会話、友達の会話。

悪口とは本人が居ないところで会話するものだ。それを知ってか知らずか同じ車内で互いの悪口を言っているのは実に笑える。

レールの繋ぎ目である部分を通過する度にガタゴトと音が鳴る。これは｢ジョイント音｣と言うらしい、鉄道好きの知り合いが言っていたが最近はレールが長くなったとか繋ぎ目を塞いだとかで音がしないと悲しんでいた。

確かにこの音が聞こえないと寂しいと思う。だが、いつか忘れられるか思い出話になる。

それは歴史も同じ事だと俺は思う。体験した者やその瞬間に立ち会った者は皆死んでいき、そのうち教科書や本、語り継がれる事でその人物や物は捻じ曲がっていく。なんとも哀しい事やら。

「･･･？」

どこからか声が聞こえる、この満員電車の中で声が聞こえるのは当たり前だが会話とかではない。さりげなく辺りを見渡すと、ＯＬと思うスーツ姿の女性の顔が視界に入った。

その顔は快楽と言える顔ではなく明らかにどうしようと窮地に立たされた表情だ。

今日は移動できるほどの隙間があるので上手く身体を滑り込ませ、女性へと近付く。自然な動作で携帯を取り出し無音カメラでシャッターボタンを押す。

今の時代は便利になったものだ、周りへの配慮なのか犯罪者を増やす為なのかシャッター音がしないアプリがあるんだから。

女性のスカートへと入りそうな手を画面に残し、女性の顔を覗き込む。

「顔色悪いですけど、大丈夫ですか？」

まさか自分に声を掛けられているなんて思わなかったので呆気に取られた顔をしていたがすぐに苦痛の表情へと変わる。