3．幸せだった ページ7
．
「彪雅！」
「黒尾？何してんだ？研磨と帰らねぇの？」
部活終わりの帰り道
黒尾は走ってきたのか息切れをしていた。
「彪雅に、言いたい事があって」
「ん？あ、ごめん。明日の試合の事？残ってればよかったか？」
「そうじゃなくて！」
「お？うん？」
明日は２回目のIH予選だ。
1年の時から黒尾のことが好きな俺は正直期待してしまった。
一瞬期待して、(男同士だぞ…有り得るわけねぇだろ黒尾に限って)と蓋をしひとりで勝手に落ち込んだ。
「俺、最近気づいたんだ。」
「おう」
「お前は気持ち悪いって思うかもしれねぇけど、俺お前が…お前のことが、好きだ。」
「は…？」
「ごめ、ん…気持ち悪いよな」
驚いた。
でもそれと同時にいつもは自信満々な黒尾が否定的で小さくなってるのが面白くて笑いが込み上げてきた。
「なっ！なんで笑うんだよ！」
「ごめんごめん」
「謝るならせめて笑うのやめてからにして！？」
俺は笑いを止めようと息を吸って吐いて吸って吐いて…
落ちつくと目に涙が溜まってたことに気づきそれを拭きながら言ってやった。
「俺は1年の頃からお前のこと好きだったんだけど？おっせーよばーか。」
.
「っ！」
ぼーっとした頭をアラーム音が現実へ引き戻す。
「なんだよ…夢、か…」
やけにリアルで思い出したくもなかった幸せな話。
昨日、あいつにイラついたまま寝たから…と1人でその夢を見た理由を作る。
「くそっ…朝から鬱陶しい」
水1杯を勢いよく流し込む。
最悪な夢を見た日に限って空は調子がいい。
カーテンの隙間から零れる光が異様に眩しかった。
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作者名：ハヌル | 作成日時：2020年7月25日 14時
