世界は残酷だ【HQ】【男主】

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普通に俺らは祭りの屋台を見て回っていた。
恋人と言っても周りにとってはただの浴衣を着て祭りに来た“男友達”という認識しかされない。
手を繋いでるわけでもないし男2人組を見て同性カップルを想像するのは一部の人間ということも分かっているから何も言えない。
分かっているのだが…

「きゃー♡侑君だぁ！お祭り来てたんだね！」
「侑くぅん！こっちみてぇ！」

…なんだこのライブ状態は。
侑にはたくさんのファンがいることは分かっている。
だから心のどこかでこうなることも予測していた。
というかお互い分かっていたからお家デートが多かったはずなのだ。
まあ、侑は変に単純というか自分に素直というか…
黄色い歓声をあげる女子をガン無視して大量の食べ物を両手に持ち頬をリスのように膨らませて咀嚼をしていた。
この前の告白された日は男に嫉妬して(しかも侑の仲間や片割れ)、現在は女に嫉妬している。
男女に嫉妬していたらこの全人類みんな嫉妬する対象なのか…と1人でこの結論に至った。
こんな黄色い歓声なんて元から知ってる事だし覚悟してたのに、と思ってたより自分の器が小さく心が黒くなるような気がした。


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「俺らのデート邪魔すんなや。この喧し豚」

侑は女の方を向きながらそう言った。
小さな声だから黄色い歓声で女には聞こえないだろう。
しかし鬼の形相…よりも怖い顔で女たちを睨みつけるから「ひっ」と声を出して逃げていった。

「いいの？あれ…」
「うっさい声のせいで葵の声聞こえんくなるの嫌や。てか、葵が居ればほかいらんし。」

ならもっと早く追い出してくれればよかったのに…とぼそっと声に出した。
すると侑は気持ち悪いくらいにやりと笑い、俺の耳元でこう言った。

「葵の嫉妬してる顔が可愛すぎて…♡」

顔の熱が一気にあがる。
そんな俺を見てまた「かわいい」と侑が言う。
心臓の音がうるさい。
侑にこの音だけは聞かせたくないと思っていた時、俺の心音を隠すように花火が始まった。


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