その先へ 前編 ページ44
目が覚めた後は、詩織は医師から問診を受けたり、胃潰瘍について調べたりしながら時を過ごしていた
「祈織は今日退院なんだよね…」
「詩織も直ぐに退院できるよ。冬花と一緒にまた来るから」
「ふゆちゃんと…？わかった、待ってるからね」
冬花は2人の共通の数少ない友人である
その時
コンコン
「祈織、詩織、俺だけど」
「要兄さん？」
「どうぞ」
要に付き添われてきたのは絵麻だった
「妹ちゃん、俺はこれで」
「はい、ありがとうございました」
要は直ぐに病室を出て行き、絵麻と2人は相対した
「祈織…二人だけにしてもらってもいい？」
「…わかった。終わったら呼んでね。僕も彼女に言いたいことがあるから」
「うん」
詩織の頼みで祈織も部屋から出て行きいよいよ2人だけとなった
Side Ema
今私は詩織さんと対峙している
向き合うことがすごく怖い
やっぱり私は朝日奈家に居られなくなるだろうか
「ねぇ、もう少し近くに来て」
そう言われベッドのすぐ隣に立つ
パシーン
頬に衝撃が走る
私は詩織さんに頬をぶたれたのだ
「これは…私のことを心配してくれた祈織、琉生兄さん、要兄さん、光兄さん、棗兄さんの分」
「えっ…」
「叩かれると痛いでしょう？祈織や琉生兄さん達はこれと同じ痛みを経験したの…。あなたのことを心配した人がいたように、祈織達は私のことを心配してくれた。自分の大切な人が苦しんでいる時って、自分もまた同じ痛みを感じることがある。あなたはそれを知っていた？」
「知らなかった…。でも、わかっていたならどうして止めようとしなかったんですか！止めようと思えば止められたでしょ！」
「気付いたから。あなたがどうしてこんな事をしようと考えたのか」
「詩織さんに何がわかるんですか！昔からひとりぼっちでずっと寂しかった私のこと…」
気がつくと私は涙声になっていた
「パパは仕事で殆ど家にいなくて、ママは私を産んですぐ死んじゃったから私はいつもひとりだった！パパが再婚して新しく兄弟ができて漸く一人じゃなくなると思ったのに…」
「兄さん達は私ばっかに構っていて誰もあなたを見ていなかった…。だから私は止めようとしなかった」
「どうして？」
「誰か一人でもあなたの心に気づく人がいると信じていたから。昔、私の孤独に気付いてくれた人達みたいに」
そう言う詩織さんは微笑んでいた
全てを包み込むような温かな笑顔
私が一番欲したものだった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 272人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水無月のぞみ - 名前変換されてこそ夢小説じゃないの？ (2022年1月11日 6時) (
レス) id: 90a3a483bc (このIDを非表示/違反報告)
夕凪(プロフ) - ふぢさん» 最初のページに名前固定ですと明記してあります。ちゃんと読んでいただけたでしょうか？こちらも理由があって名前固定にしているので変えるつもりはありません。 (2014年12月1日 17時) (レス) id: cddaab9fd1 (このIDを非表示/違反報告)
ふぢ(プロフ) - 名前書くところ、すぐにつくってくださいやくなこと (2014年12月1日 17時) (レス) id: 06f239ce38 (このIDを非表示/違反報告)
来栖歩美(プロフ) - 更新、お疲れさまでした！ (2014年11月18日 19時) (レス) id: 709b45f807 (このIDを非表示/違反報告)
トモ(プロフ) - 完結？おめでとー(*^ω^)ﾉ♪続編楽しみにしてる！ (2014年11月18日 19時) (レス) id: 03b05e44d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夕凪 | 作成日時：2014年10月2日 1時
