八男の優しさ ページ13
リビングを飛び出した詩織ちゃんの後を追いかけた僕は部屋のドアの前にいた
女の子の部屋に勝手に入るのは少し躊躇する
だけど今はそんな事態じゃないと思いドアノブを回した
ガチャ
「詩織ちゃん、入るよ」
誰の気配もなくて心配になる
その時トイレの方から
ゴホッ…ゲホッゲホッ…
という音が聞こえてきた
まさかと思ってトイレの扉を開ける
見つけた
詩織ちゃんはトイレの中で蹲っていた
どうすればいいのかわからなくてとりあえず手で背中をさすってみる
何度もなんどもさすると少し楽になったみたいだった
ジャアーッ
「ハアッ…ハアッ…ハアッ…ありがとう、琉生兄さん」
「大丈夫、詩織ちゃん？歩ける？」
「たぶん」
立ち上がろうとしたら足がふらついて体が傾く
とっさに傾いた体を抱きとめた
「無理、しなくていい。僕が、運んで、あげるから、ね」
「お願いします」
詩織ちゃんの膝の裏に腕を回して抱き上げる
抱き上げた体は年齢にしては随分軽くて僕はびっくりした
ベッドまで運ぶとベッドに座らせて備え付けの簡易キッチンで塩を混ぜた水をコップに入れもう一つボウルを持って詩織ちゃんの元に戻る
「これ、お水。口の中、気持ち悪いと、思うから、これで、ゆすいで、ね」
兄弟と言えどもきっと見られたくない筈だから僕は詩織ちゃんに背を向けた
詩織ちゃんの部屋は白と空色を基調として統一されている
何色にも染まっていない白と空の様に澄み渡った蒼
朝比奈詩織という存在そのものの様な色
「終わったよ、琉生兄さん。迷惑かけてごめんね」
「ううん、迷惑、なんかじゃ、ない。詩織ちゃんは、大事な、妹。だから、気に、しなくて、いい」
「琉生兄さん…」
詩織ちゃんの目から大粒の涙が一粒零れ落ちた
Side Shiori
昨日から立て続けに自分に起きた出来事で擦り切れていた心に琉生兄さんの
”大事な妹”
の一言はあまりにも暖かかった
いつの間にか視界がぼやけていて頬が濡れている
「あれっ？どうして私泣いてるの…？どうしよう…とまらない」
早く止めないとという思考とは反対に中々止まってくれない
「無理に、とめようと、しなくて、いい。泣いて、いいよ、詩織ちゃん」
琉生兄さんが優しくそういうから益々止まらなくなって私は実に十年ぶりに大泣きをした
琉生兄さんが私が祈織以外に涙を見せることができる数少ない人物の一人で本当に良かった
因みに後の2人は今この家にいない
今日1度だけ
もう泣いたりしない
Side end
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水無月のぞみ - 名前変換されてこそ夢小説じゃないの？ (2022年1月11日 6時) (
レス) id: 90a3a483bc (このIDを非表示/違反報告)
夕凪(プロフ) - ふぢさん» 最初のページに名前固定ですと明記してあります。ちゃんと読んでいただけたでしょうか？こちらも理由があって名前固定にしているので変えるつもりはありません。 (2014年12月1日 17時) (レス) id: cddaab9fd1 (このIDを非表示/違反報告)
ふぢ(プロフ) - 名前書くところ、すぐにつくってくださいやくなこと (2014年12月1日 17時) (レス) id: 06f239ce38 (このIDを非表示/違反報告)
来栖歩美(プロフ) - 更新、お疲れさまでした！ (2014年11月18日 19時) (レス) id: 709b45f807 (このIDを非表示/違反報告)
トモ(プロフ) - 完結？おめでとー(*^ω^)ﾉ♪続編楽しみにしてる！ (2014年11月18日 19時) (レス) id: 03b05e44d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夕凪 | 作成日時：2014年10月2日 1時
