Fireworks. (ページ22)

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京極くんが来なくなって、早1ヶ月。別に彼がいる前の日常に戻っただけ、ただそれだけなのに心にぽっかりと穴が空いたような感覚がして少し息がしづらい。大切なものは失ってから気付くとよく聞くが、今ならその言葉の意味を心の底から理解できる気がする。ただの喫煙仲間というだけなのに私の中での彼の存在はどうしようもなく大きくなっていたのだと嫌でも実感してしまうのだ。

あー、こんな事なら連絡先くらい聞いておけば良かったかな。もう1ヶ月もここに来てないということは、そういう事だよな。うん。

今から吸う最後の一本が無くなったら、もうこのコンビニで待つのも辞めよう。そう思い、煙草に火を付ければ「A」とずっと聞きたかった彼の声が聞こえる。

「……京極、くん」

うわ、うわ、京極くんだ。この1ヶ月、ずっと会いたかった人。ずっと声が聞きたかった人。話したいことも言いたいことも沢山あるのに、色々な感情が渦巻いて上手く言葉が出てこない。そんな私達の間に流れる沈黙を先に破ったのは京極くんだった。

「ごめん、ちょっと仕事忙しくなってここ来る時間とれんくて」
「うん」
「……伝えようと思ったんやけど、よく考えたら俺ら連絡先交換してへんやん！ってなってさ」
「うん」
「最悪や、やらかした！ってなって。で、今日やっと時間取れたから一か八かでここ来たんやけど、……おってくれて良かった、ほんまに」

そう言って心の底から安心したような表情を見せる京極くんに、胸がきゅっと締め付けられる。本当は言いたい事、いっぱいあったのに。そんな顔見せられたら、何を言おうとしてたかも全て吹っ飛んでしまう。

「ずっと待っててくれたん？」
「…今吸ってるやつが無くなったら、もうここ来るの辞めようと思ってた」
「まじで言ってる？間に合って良かった～…」

そう言って笑う京極くんにまたきゅうと胸が締め付けられる。…うわ、うわ、待ってこれ。私もそこまで鈍感じゃないし、彼を見てこんな感情に襲われる理由くらい、もう分かってしまう。

「あの」
「…はい」
「今後もうこんな事がないように、連絡先交換しませんか」

そんな彼からの提案に対して首を縦に振る私。ただの喫煙仲間で、それ以上でも以下でもなかったはずなのに。自分の恋心を自覚してしまってから見る京極くんの姿は、誰よりも、何よりもきらきらして見えた。