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見捨てたくせに ページ9

「俺らと一緒に帰る?」
ファミレスで帰る支度をしているとGENが聞いてきた。
『いいの?』
「お前一人だと心配だからな」
余計なお世話だけど、同じ電車だからいいかな。
そんな事を思っていると、


「A」


ふいに名前を呼ばれ、腕を捕まれた。
「先に出るわ」
彼は周囲にそう言い、そのまま強引に外に連れ出された。
ふと顔を見上げると、無表情の拓也君だった。



暫く歩き、ライブハウスの方までやって来た。
『拓也君、離して』
「……何で?」
『え?』
「何でGENとあんなに楽しそう話せんの?お前を見捨てたやつなのに」
無表情だったその顔に、寂しさと悲しさが表れている。
『それは……』
「俺、GENとAが喋ってんの見たくないわ」
『……ごめん』
「これ以上、俺が嫉妬するような事せんといてな?」
『でも、私……!!』
ライブハウスの壁に追い詰められる。
これは……、壁ドン?
「今日は口答えが多いな、お人形さん?」
あの不敵な笑みで、私にしか見せない顔で、じっと見つめられる。
「お前は俺の人形なんやで?GENと喋って俺が許すと思ってんの?」
拓也君の顔が、どんどん私の顔に近くなってくる。
「ご主人様の命令は聞かないとあかんやろ?」
唇が重なりそうになる。
誰か、助けて……!!




「やめろ、拓也!」





『……GEN!』
「Aが怖がってるだろ!」
「……そんな事ないよなあ?」
拓也君が私の頭を触ろうする。
「Aに触るな!」
GENは走って私たちに近付き、私の手を握って拓也君から引き離した。
「大丈夫か?」
『うん』
「お前、拓也に人形って呼ばれてるのか?」
『見てたの?』
「当たり前だろ!心配したんだぞ!」



「お前、本当にA事好きなのかよ」
「そうやで」
「好きな子によくあんな事言えるな」
「ふん、Aが泣いてるのを放っておいた奴にそんな事言われたくないわ」
「お、お前、まさか……」
「Aが閉じ込められて泣いてたのに、それを放っておいて逃げた臆病者が、よくあんな楽しそうに話せるよな?」
「……あれはちゃんと理由があるんだ!」
拓也君の話を遮るかのようにGENは叫んだ。そして、私の顔を真っ直ぐ見る。
「今は言えないけど、絶対いつか話すから」






その後、GENは先に戻ると言って私の前から立ち去った。
「Aの事が好きなのは、拓也だけじゃないからな」
この意味深な言葉を残して。

【なかがき2】→←ファミレス 後編



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神吉ひなの(プロフ) - ほんとに更新お願いします。いいところで止まってしまっているので、、 (2017年8月28日 14時) (レス) id: 8d3e88b876 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - きたの赤身さん» いえいえ!こちらこそすごく楽しませてもらってます!作者さんの文才に感心しっぱなしです!!笑これからも応援してます!!(*´∇`*) (2017年3月5日 12時) (レス) id: bbf1916b32 (このIDを非表示/違反報告)
きたの赤身(プロフ) - ふわりさん» コメントありがとうございました!凄い励まされたので更新頑張ります! (2017年3月5日 2時) (レス) id: 5637995c07 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - コメント失礼します!とっても面白いです!物語の世界に引き込まれました!!是非更新していただけると嬉しいです! (2017年3月2日 20時) (レス) id: bbf1916b32 (このIDを非表示/違反報告)
きたの赤身(プロフ) - 月苺さん» ありがとうございます!KOUHEIさんをブラックキャラにしていいのかと思いながら書いていたので(笑)、気に入って頂けてるなんて嬉しいです!更新頑張ります!! (2016年12月16日 15時) (レス) id: 5637995c07 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きたの赤身 | 作成日時:2016年11月8日 3時

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