その28 本音と密室 ページ30
まさか、あきら君に告白されるなんて……。
『あきら君、ありがとう。でも、考えさせて欲しい』
「……そうか、分かった」
『私、今日は先に帰るね』
廊下を歩いていると、山中君とすれ違った。
無言で、何事もなく。
いつもだったら、山中君は私の腕を掴んで飛び止めてくれるのかな。
時に意地悪な態度で、時に甘えるように、時に寂しそうに、
名前で呼んでくれるのかな。
あれ？何考えてるんだろう私。
あきら君に告白されたのに、山中君の事ばっかり考えてる。
翌日。あきら君の事ばっか考えてて授業に全然集中出来ない。
山中君は授業中、ずっと寝ていた。
窓際の席だから、太陽の光が当たって凄く気持ち良さそう。
「A！次の授業、理科室だよ！」
麻衣ちゃんが呼んでる。
でも、
『後で行くから、先に行ってて！』
「うん！」
理科室の場所は、山中君に教えて貰ってるから大丈夫。
『山中君、起きて』
うつ伏せで寝ている山中君に声を掛けるけど、起きる気配がない。
『山中君！』
「A……」
小声だけど、私を呼んだ気がした。
私の夢でも、見てるのかな？
なんか良い気分じゃないけど……。
「俺の彼女に……、なってよ……。側に……、おってよ……」
その言葉に、声が出なかった。
何故か体が熱い。
山中君は、ずっと私の事を思ってくれていたの？
だったら、尚更気になる。
どうして、あんな事を言ったのか。
あんな接し方をしてくれていたのか。
ねえ、どうして……？
……ガチャ。
ん？今、扉が閉まる音しなかった？
『嘘……、閉まってる！！』
外側から閉まってるから全然開かない。
「……ん、何？」
山中君が起きた。
「あれ、水沢さん？……皆は？」
『理科室に移動したよ』
「水沢さんは行かへんの？」
『いや、あのー、扉が閉まっちゃったみたいで……』
「……ふぇ？」
寝起きの山中君は、状況をよく理解していないよだ。
『私たち、閉じ込められちゃったみたい……』
教室で山中君と二人きりなんて！
しかも、こんな時に！
ど、どうしよう……。
「水沢さん」
山中君が、おいでと手招きしている。
扉を離れ、山中君の席に向かう。
「大丈夫、何もしない。でも、水沢さんと話がしたい」
こんな真剣な顔、初めて見たかもしれない。
それも、私の事を思ってくれているから？
「水沢さん、あきらの事好きなの？」
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作者名：きたの赤身 | 作成日時：2016年10月26日 14時
