その23 二人だけの秘密 ページ25
月曜日の朝。
「おはよう、A」
やっぱり、山中君が駅で待っていた。
でも、雰囲気がいつもと違う。
怖いというより、何故か寂しそう……。
「昨日は楽しかった？」
『……うん』
「あきらと二人きりやったんやろ？」
え、何で知ってるの！？
「昨日の朝、あきらからメール来た。今日、Aとデートするって」
あきら君、そんなメール送ってたの！？
「Aーーーーーーー！！」
振り替えると、自転車で全力疾走している彼だった。
『あきら君！おは……』
「おはよおおおおお！！」
あきら君は、その自転車で先に行ってしまった。
「あ、Aと山中君！」
後ろから、自転車に乗った麻衣ちゃんがやって来た。
「あきらったら、今日ずっとテンション高くてあんな感じなの」
『そ、そうなの？』
昨日の事があったからかな。
「私、あいつを追うから。先に行くね！」
麻衣ちゃんは、自転車を再び漕いで行ってしまった。
「今、あきらって言った？」
『あ……』
山中君が苦しそうな顔をしている。
「なあ、俺の事だけ考えろって言うたよな……？」
何度も聞いている台詞なのに、今日は恐怖を感じない。
だって今日の山中君、とても辛そうだもん……。
下駄箱で靴を履き替えていると、
「A！」
『あきら君！……その髪どうしたの？』
あきら君の髪がぐしゃぐしゃになっている。
「チャリ全力で漕いだからちゃう？でも、ずっとここでAの事待ってたから、髪の事なんか忘れてたわー！」
『もう、変なの。教室行こう？』
「おう！拓也も行くで！」
「……俺はいい」
『……え？』
「しげの所に寄ってから行くから。水沢さんは先に行ってて」
そう言うと、山中君は鈴木君のクラスへ行ってしまった。
山中君は教室でも目を合わせる事は無く、話す事も無かった。
退屈そう外を眺め、授業中は寝ている時もあった。
まるで、始業式の時に見た山中君だ。
お昼はあきら君と麻衣ちゃんの三人でご飯を食べて、山中君は教室を出て行った。
私、もしかして避けられてる？
「今日は練習あるから、Aと途中まで電車乗れる！」
放課後、あきら君は嬉しそうにガッツポーズしていた。
「あ、A、昨日はごめんな」
『え、何が？』
「何って、昨日勝手にキスしてしもうたから」
あきら君は小声で両手を合わせた。
「だから、ごめんなって」
『あ、謝らなくていいよ。確かにちょっとビックリしたけど』
「そうか。でも、昨日の事は二人だけの秘密な！」
『……うん』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きたの赤身 | 作成日時：2016年10月26日 14時
