君と僕だけの時間 (ページ21)

今日:11 hit、昨日:2 hit、合計:58,197 hit

その19 名前で呼んでページ21

Aの耳元で何かを囁く拓也。
恥ずかしがって、硬直するA。
それを見た時、あの自販機で見たあの光景が頭の中に浮かんだ。

それを見るのが嫌になった俺は、無心でその腕を掴んでいた。

「大丈夫やった？」
『うん。村上君、ありがとう』
「おう……」
安堵の表情を浮かべるA。
でも、何故か納得がいかない。
あいつの事は名前で呼ぶのに、
「……俺は、名字で呼ぶんやな」
『え？』
「拓也は名前で呼ぶのに、俺は名字なんやな」
『えっと、あれは……！！』

気が付いたら、俺はAを抱きしめていた。
拓也と同じ事をしてるは、分かってる。
でも、気持ちが押さえきれない。

『村上君……』
「俺の事も、名前で呼んでや……」
『でも……』
「俺、この間の練習の時見てたで。自販機の前でAと拓也がこんな風にしてたの」
『嘘……！！』
「大丈夫。誰にも言わないし、拓也も俺に気付いてる」
俺も拓也と一緒やな。
好きな子にこんな事して、驚かして。
でも、Aの表情がどこか落ち着いていた。
だから、何故か自信が持てた。

「俺もAを独占したい。だからもう少し、このままでええか？」