君と僕だけの時間 (ページ20)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:58,186 hit

その18 コーラと囁きページ20

ライブハウスなんて初めて来た。
人多いな……。
クラスの子も何人か来てる……。
「A、緊張してる？」
麻衣ちゃんが私の軽く肩を叩いた。
「ほら、始まるよ！」

「THE ORAL CIGARETTESです！よろしく！！」
ライブが始まった。
凄い盛り上がり……！！
皆、かっこいい！！
山中君、別人みたいだな。

「A！俺のベースどうやった？」
『うん、かっこよかったよ』
「ほんまに！？めっちゃ嬉しい！！」
山中君、また不機嫌になってないかな。
様子を伺うと、鈴木君と話しててこっちに気付いてないみたい。
「いやー、女子に褒められるとテンション上がるなあ」
「ちょっと！私もいつも褒めてるじゃない！」
「麻衣は上から目線やから嬉しくないわ」
「そんな言い方ないじゃない！」
村上君、麻衣ちゃんとケンカし始めちゃった。

「Aちゃん」
話し掛けられて振り替えると、コーラを持ったまさやんだった。
「これ、拓也に渡してあげてな。あと、ライブの感想言うてあげたら、喜ぶと思うで？」
『え、はい……』
コーラを渡され、私は山中君の方へ歩いていく。
でも、他の子と喋ってて全然近付けない。
『や、山中君……！』
呼んでみたけど、全然届いてない。
どうしよう……。
あ、山中君と目が合った。
今だ、大きな声を出せ、私！！

『拓也君！！』

しまった。
今、私、山中君の事、
名前で……、呼んだ……！？
「今、拓也の事……、名前で……」
村上君は呆気にとられている。
鈴木君も、麻衣ちゃんも、まさやんも、皆ビックリしてる。
山中君は、微笑んでこちらに近付いてきた。
ど、どうしよう……！
無言で、私の手からコーラを取る。
「ありがとう、水沢さん」
あれ？何も無い……？
そう思って、安心していた。
その瞬間だった。

「期待した？A」

甘く、色っぽい声が耳元に届く。
耳元で囁く、山中君。
「嬉しいで。でも、俺は呼び捨てやないと、お前の事を名前で呼ばへんよ？」
山中君の吐息が、耳に当たる。
くすぐったい……。
「まあ、まさやんに感謝やな。もしかしたら、あいつも気付いてるのかもな」
そんなのどうでもいいよ。
離してよ。こんな人前で、恥ずかしいよ。
二人きりの時だけじゃ無かったの？

そんな時だった。
強引に腕を引っ張られる感覚。
そのまま、ライブハウスの外に連れ出された。

顔上げると、村上君がそこにいた。