君と僕だけの時間 (ページ13)

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その12 見たくなかったページ13

拓也とAが飲み物を買いに行ってから10分以上が経とうとしている。
「二人とも帰ってくる遅いなー」
「なんや、あきら気になるんか？」
まさやんが顔をニヤニヤさせながら聞いてくる。
鬱陶しいなあ、この鹿男め。
「俺、二人の様子見てくる！」

気になるに決まってるやろ。
Aが拓也に変な事されてるかもしれへんし。
階段を急いで駆け降りて、ビルを出る。
右を曲がれば、二人がいる筈や。
「…………！」
自動販売機の前に出た。
だが、その光景を前に、声が出せなかった。

『……拓也君、もういいよね……？』
「もうちょっとだけ」
『早く戻らないと、まさやんたちが……』
「俺の事だけ考えろって言うたやろ？あと、喋るな」
『……』

自動販売機の前で、拓也とAが抱き合っている。
拓也はAの耳元で何かを囁いている。
拓也の声は聞こえないけど、Aは拓也の事を名前で呼んでいた。
Aは俺に背を向けているので、俺に気付いてへん。
でも、拓也とは……、

確実に目が合っていた。

「もう少しだけ、このままいようや」
拓也、その台詞、俺に言ってるんか？
お前は、Aをどうしたいんや？
「……って思ったけど、やっぱり戻ろうか」
俺を見つめながら、拓也は微笑んでいる。

俺は静かにこの場を立ち去る事しか出来なかった。